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2017.02.09

船水颯人の逆算の思考法「負ける要素をクリアーすれば勝てる」

【WEB連載】船水颯人『JKTへの道』#05 試合の準備とメンタル

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5月の全日本シングルスに始まり、ソフトテニスはシーズンを通してほぼ毎月大きな大会があり、各カテゴリーの個人戦・団体戦も含めると数多の大会をこなさなければならない。「目の前の試合をがむしゃらにプレーするだけでは、周りと差がつかない」と語る船水颯人。大会では「テーマ」にこだわり、「勝つために」ではなく、「負けないために」を逆算して臨むという。

ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第5回は、試合の準備からメンタルの話へ。

船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大

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目の前の結果より、自分の考えていたことができたかどうか

――前回、「全豪オープンを見て、ゲームの組み立て方など学ぶところがある」と話していました。ゲームプランは、事前にどこまで組み立てているのですか。

昨年は大会ごとにテーマを持って、プランを立てていました。決め球はこのコースを狙うとか、1試合に1本でもいいから決めてやろうとか、具体的に定めていましたね。この大会はサービスエースを狙うとか、レシーブで点を取れるようにとか。ミスは多かったですが、チャレンジしました。そうやって、大きな大会に照準を合わせて準備しました。

――大きな大会から逆算しているのですね。

だいたいそうです。大学生は試合が多いので、コントロールしながら戦わないといけません。昨年は天皇杯(2016年10月)とアジア選手権(同11月)に照準を合わせて、そこに向けて、ピークを合わせていました。

――新シーズン(2017年度)も、年間スケジュールを見ながらテーマを立てているのですか?

そうですね。今、冬の時期はウエイトトレーニング中心に取り組み、夏になると、コートの練習に切り替えていきます。技術的なことをいえば、今年はシングルスに力を入れようと思っています。

目の前の試合をがむしゃらにプレーするだけでは、周りと差がつきません。他の人と違いを出すために、自分は何をしないといけないのか。それを考えて年間のスケジュールを立てています。一つひとつの積み重ねが成長につながっていきますから。勝負をしながらも、テーマにもこだわります。

――極端な言い方をすれば、負けた試合で納得することも?

試合に負ければ、そのときは悔しいですよ。それでも、考えていたことができていれば、納得します。正直、僕にとっては目の前の結果よりも、自分の考えていたことがしっかりできたかどうかが重要です。

メンタルチェックシートの勝利意欲が「1」ということも(笑)

――そうやってピークを合わせた天皇杯、アジア選手権では結果を残しています。それだけの準備を重ね、いざ本番となれば、緊張しそうなものですが、「あまりしない」と話していました。驚いたのは「勝ちたい気持ちを捨てる」とも。

僕にはそのメンタルの作り方が合っているので。講習会でも、そのことについてはいろんな人からよく聞かれるんです。「笑顔で試合をしていますね」とか、「楽しそうですね」だったり、あまり緊張していないとよく指摘されます。この連載でも話しましたが、僕は高校時代、勝ちにこだわり過ぎて緊張するタイプでした。それを避けるために、今はあえて「勝ちたい気持ちを捨てる」ようにしているんです。

――勝負の世界では相反することでは?

それもよく言われます。メンタルチェックシートをつけると、勝利意欲「1」ということもあります(笑)。「この試合は絶対に勝ちたいと思いますか?」という質問に「いいえ」と答えていくと、そうなるんですよ。

高校時代、東北高の中津川澄男先生がメンタルトレーニングに詳しく、指導していただいたのですが、当時はあまりメンタルについて気にしていませんでした。勝ちたい気持ちばかりで、意欲とは裏腹に思うように勝てなくて……。

大学に入ってから、立ち止まって考えてみたんです。どうしたら勝てるのかと。そこで、高校時代に指摘されたメンタルのつくり方を思い返し、実践してみました。そうすると、勝てるようになり、この方法は自分に合っているのだと実感しました。

――勝つための手段だと。

勝つためというより、僕の場合は負けないための方法です。勝つために、どうすればいいのかを考えて、プランを立てたり、練習したりする人は多いと思います。僕は「これをすれば負ける」という要素を排除していきます。例えば、サービスとレシーブのミスを繰り返せば、どんな相手にも負けてしまいます。逆に負ける要素をクリアーすれば、勝てると思っています。だから、負ける要因を整理して試合を臨んでいるんです。

――自分の技術に自信があってこその発想ですね。ミスしなければ、勝てるということでしょうか?

そういうことなりますね。ただ、ミスしないことが難しいんです。どれだけ、練習しても――。だからこそ、日々の努力は欠かせません。

船水颯人の試合の準備
①大会ごとにテーマを決める
②負ける要因をひとつずつクリアーしていく
③ミスしないために日々努力する

>>船水颯人『JKTへの道』バックナンバー
#01 国際大会初の個人戦金メダルに「興奮しすぎました(笑)」 2016.12.30公開
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次回#06は2月16日(木)に公開予定です。

取材・構成◎杉園昌之 インタビュー写真◎阿部卓功

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