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2017.03.25

【行われなかった選抜①】1年大将の船水/九島と丸中/鈴木の躍進で選抜V

WEB特別企画・センバツを振り返るVol.2『東北高』文◎八木陽子

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2010年の高校選抜を制し、観客席に笑顔を向ける東北高1年生ペア4人。左から中津川監督、船水、九島、丸中、鈴木

2017年の全日本高校選抜が3月28~30日に愛知県名古屋市・日本ガイシスポーツプラザで行われる。ソフトテニスマガジン・ポータルでは、WEB特別企画としてソフトテニス記者の八木陽子氏による『センバツを振り返る』をソフトテニス・マガジンの秘蔵フォトとともにお届け。

第2回は、2011年3月、行われなかった高校選抜で、優勝候補として連覇をかけて戦うはずだった東北高をクローズアップ。

※学年はすべて当時

綺羅星のごとく現れたスター

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まだあどけなさの残る東北高1年の船水/九島

2011年3月11日――東北地方を中心に甚大な被害を及ぼした東日本大震災から6年。いまだ深い悲しみを抱えている方々も多い。多くを失いながらも立ち上がり、一歩を踏み出し、前進する姿に触れるたびに、復興への強い思いがひしひしと伝わってくる。

同年3月、センバツ出場が決まっていた東北高(宮城県)。“思いの強さを原動力に、目標を成し遂げる”を体現した彼らの軌跡を追っていこう。

2009年7月ハイスクールジャパンカップ
船水/九島、1年生大将が存在感アピール!

近年のハイスクールジャパンカップでは、抽選による組み合わせのほかに、エース以外のペアが代表権をもぎ取って出場を決めることもあり、とにかく優勝争いが読みにくい。この大会で決勝にコマを進めてきたのが高田商業の3番手・荒尾大輔/荒木翔と、東北高1年大将の船水雄太/九島一馬だった。

この年、高田商業は最強布陣でシーズンに挑んでいた。「僕たちは選抜、インハイ団体、個人、国体、そしてこのハイジャパの5冠を目指しています。昨年2位の林田(和樹)/巽(慎也)のリベンジのためにも絶対勝ちたいと思ってやっていた。仲間のためにもいいテニスをしたかった」と荒木。高田商業ペアは、ハイジャパ優勝にも執念を燃やしていた。

ただ、東北高の1年生ペアは手ごわかった。前年の全中個人3位の船水は、深い打球とテンポのいい展開で高田商業ペアを苦しめ、九島もまだ粗削りながらもスピーディーかつダイナミックなプレーで応戦してG1-3から高田商業ペアに追いつく。

結局、高田商業の看板を背負った荒尾/荒木の前に7-⑨で屈したが、東北に生きのいい、伸びしろのあるルーキーの存在を存分に見せつけた。当時、東北の中津川監督も船水/九島について「中堀成生/高川経生のようなスケールの大きなペアに育ってほしい」と話していた。

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2009年9月のハイジャパで準優勝の後衛・船水雄太(現NTT西日本広島)

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同じくハイジャパで九島一馬(現ミズノ)

2010年3月全日本高校選抜
「意識の高さは今までで一番」

綺羅星のごとく高校男子界に現れた船水/九島、彼らが新2年生を迎える直前の高校選抜。2月のアゼリアカップ、直前の私学選抜大会で優勝し、波に乗る東北は、2年ペア1組、1年ペア2組の若い布陣で選抜に乗り込んだ。

船水/九島と同じ1年ペア・丸中大明/鈴木琢巳の急成長が大きな推進力となった。当時のソフトテニス・マガジンの記事を見ても、船水/九島は「スピードと破壊力を兼ね備えた」、丸中/鈴木は「戦略に長けたダブル後衛」、そして後輩に刺激を受けた2年生ペアの山田拓真/田中建は「テンポの良さと勝負強さが身上」と記され、それぞれ3ペアが持ち味を発揮した大会だった。

1回戦から3対戦連続ストレート勝ちで4強入りを果たした東北。この大会最大のヤマ場となったのが、準決勝の上宮戦だった。トップに出た山田/田中が1勝を挙げたものの、2番の丸中/鈴木のダブル後衛に対し、上宮が同様にダブル後衛で対抗する。ロングラリーに屈し、3番勝負へ。

2対戦試合がなかった船水/九島が豪打とスマッシュで速攻を仕掛け、G④-1で見事にチームの危機を救った。

準決勝3番勝負をものにして勢いづいた船水/九島は、決勝ではトップに出て尽誠学園の大将・白井拓巳/能口(現・髙月)拓磨との壮絶なラリーを1で制す。2番は準決勝での黒星を払拭すべく、丸中/鈴木が攻撃的なストロークでG④-2。東北が2年ぶりの選抜Vを決めた。

船水/九島のライバルとなる丸中/鈴木の存在もクローズアップされた、2010年の選抜。4人の切磋琢磨に加え、安定感と勝負強さを持ち合わせた先輩ペアの力もあり、東北が重厚感ある強さを見せつけた大会だった。

「高校生の枠を超え、天皇杯や世界大会でも勝てる選手を育てたい」と中津川澄男監督。夢を現実にしていくに値するタレントぞろいとなった東北の、今後のさらなる飛躍が期待された。

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1年時はダブル後衛で戦った丸中大明(左)/鈴木琢巳(右)。現在、丸中はNTT西日本広島、鈴木は福井STCに所属

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選抜Vを果たした東北高のメンバー

2010年実施 全日本高校選抜大会男子結果

>>【行われなかった選抜②】丸中/鈴木がハイジャパ優勝~3.11東日本大震災
>>【行われなかった選抜③】選抜中止からインハイVへ、船水雄太「僕らはプレーで勇気づける」

文◎八木陽子(フリーランス編集記者) 写真◎井出秀人(ハイジャパ、選抜)

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