TOPICS
プレー&コラム
2017.07.29

【張人対談・ガットを語ろう。】“張り”について[前衛編](廣島敦司×坂本哲郎)

#06 “張り”について[前衛編]

関連キーワード:

ガットの商品理解と張りの技術を磨き、老若男女のソフトテニスを全国でサポートする「張人(はりびと)」によるガット談義。いよいよ最終回は、スポーツショップ坂本の坂本哲郎氏が登場。2002年、北海道尚志学園高(現・北海道科学大高)でセンバツ優勝も果たした坂本氏が、前衛のストリングについて、高校の先輩でもある廣島氏と語り合います!
※このテキストは記事広告です(6回連載)

廣島敦司氏
GOSEN 販売促進課
1981年3月27日生まれ。ストリンガー歴14年。静内第三中→北海道工業高→中京大。前衛。大学時代にはジュニアジャパンにも選出された元トップ選手。

坂本哲郎氏
北海道 スポーツショップ坂本
1984年5月28日生まれ。ストリンガー歴8年。札幌新川中→北海道尚志学園高→明治大。前衛。札幌ウィンで小1からソフトテニスを始める。廣島氏とは高校(現・北海道科学大学高)が同じ。

ゆるみを出したいところを先に張る

廣島 坂本さんと私は、同じ北海道出身。坂本さんのお父さんも私の親も、北海道のジュニアのコーチをしています。私が坂本さんのお父さんに教わったこともありましたし、小さいころからの知り合い。いまお互いが張人として仕事をしているのは不思議な感じですね。

坂本 廣島さんは、僕が中学2年生のときにハイジャパで優勝されましたね。自分と同じ前衛で全国で活躍されていてあこがれでした。高校は廣島さんと同じ北海道尚志学園高(現・北海道科学大高)に進みました。

廣島 学年的には入れ替わり。大学は違いましたが、坂本さんが明治大に入ったときに、私は大学を卒業してゴーセンに入社して。今回の対談はガットの“張り”前衛編ですが、坂本さんご自身のガットについては?

坂本 高校、大学のころの自分は、ガットにそんなにこだわっていませんでした。ポンド数も気にしなくて「硬め」「ゆるめ」くらいです。

廣島 坂本さんはご実家がショップだから、お父さんに相談されていた感じですかね?

坂本 そうですね。任せていた感じで。

廣島 一般的に前衛のガットといえば、“反発系”でボールを弾くのがいいという選手が多く、その弾きを意識した“張り”になります。後衛だったら“球持ち感”。でも前衛でも“球持ち感”を重視する選手もいますが。

坂本 その点からいうと、僕は食いつき(=球持ち感)が欲しいタイプの前衛でしたね。今も使っているガットは、23、24ポンドくらいと、テンションがすごくゆるいんです。

廣島 結構ゆるいですね。主に小学生くらいにすすめるポンド数です。選手のレベルにより個人差がありますが、前衛で多いのは28~35ポンドの間くらい。ハイジャパでは高校生の前衛選手は32前後が多かったです。

坂本 それで、僕は張り方で反発というか、打った感触が欲しいので、スイートスポットの部分は張り終わりのほうに張って、硬くなるようにしています。

廣島 一般的に、食いつき感を出すにはスイートスポットを先に張ります。先に張った部分がガットはゆるみやすくなるので、必然的にスイートスポットを柔らかく感じる=食いつき感が出やすくなる。

坂本 僕の場合はその反対で。

廣島 坂本さんは先に下の方を張って上に上げていくことで、スイートスポットのゆるみが出るのが遅くなり、柔らかいテンションのなかでも、反発が出やすい張り方ですね。ゆるい中でも弾きを求める場合、そういう張りもあります。

坂本 後衛の場合でも一緒ですよね。

廣島 はい。弾きが欲しいという後衛なら、最後にスイートスポットを張ってあげればゆるみが少なく、反発感が出やすい。あとは受け取る側のフィーリングなので、実際に選手がどう感じてくれるか。

どこから張り始めるか。張り始めの個所のほうがゆるみは出やすい

最近は食いつきを求める傾向が

廣島 坂本さんが今、ストリンガーとして、ガットについて感じることは?

坂本 ここ数年いろいろなところに行かせてもらえるようになって勉強を重ねていますが、ラケットによっても“弾き”のラケットと“食いつき”のがありますよね。

廣島 そうですね。

坂本 ラケットに加え、ガットによっても特性が変わるので、お客さんの要望をよく理解することの重要性を感じています。

廣島 大事ですね。

坂本 そこで実際にプレーを見ることができれば「こういうふうにしたら?」と提案もできる。同じガットでも張り方1つで、もう少し食いつきを良く――といった微調整ができます。そういったことはメーカーさんやいろいろなショップのお話をうかがって勉強していきました。

廣島 私もゴーセンでガットやガット張りの指導を受けて、先輩方から張りを学んできました。ガット業界で先行者の(硬式)テニスのストリンガーさんに学ぶことも多かったし、学ぶ機会もつくってきました。ノットという部分の、しばり方にしてもいろいろな種類があります。

坂本 ノット、結び目ですね。

廣島 ノットはガットによって変えています。テニスのストリンガーさんと一緒に仕事をして情報交換をして、張りについて学びが広がりました。

坂本 考えれば考えるほど、張りについては工夫しがいがありますね。

廣島 そうですね。

坂本 前衛だからこう、という決まりごとはなく、選手の要望に合わせること。弾きたい選手はラケットも弾き系でガットの張り方も硬めに。食いつきが欲しいなら弾き系のラケットに対して食いつきが出る張り方を試したりして。

廣島 前衛はずっと“弾き”ד弾き”のように、ラケットもガットも張り方もすべて反発系で来ていたのが、最近は“食いつき”=コントロールを求めるようになってきましたね。

坂本 その傾向はありますね。

廣島 昔は、硬く張ってバンバン、ボレーを弾いていたのが、今は食いついてボールをコントロールする感覚が求められています。だけど、反発系のガットを硬めに張ると、手元にあまり感覚が残らない。特に前衛はノーバウンドのボールを処理することが多いので。

坂本 そうすると感覚が一瞬しか残らないですね。

廣島 そこでガットを食いつき系にしてみたり、テンションを少しゆるめにしたりすると、「乗っかる感覚」が多少感じられる。ボレーでも、自分でコントロールしてコースを狙って打てている感覚が、手に残りやすくなります。

坂本 分かります。

廣島 そういった微妙な調整や感覚を求めている前衛が増えている。ガットの枠となるラケットが硬いものが増えたので、よりこうしたフィーリングの差が出やすいですよね。

坂本さんは地元北海道に根付いた父のショップで、ガットへの知識を深め、選手へ伝えている。父は北海道科学大高(女子)の指導も務めている

自分の張り方を知ろう

坂本 今、北海道ではそこまでガットに要望を言う選手は多くないのですが“こんな張り方もできるよ”と、提案していこうとしています。ただ、決めつけるのはあまり良くないですから、できるだけプレーを見たりイメージするように。目指すプレースタイルをくみ取っていく。

廣島 そのために、ぜひ、選手にはリクエストしてほしいですね。「今このガットで〇ポンドで張っているのですが、こういう部分が気になっていて」と言ってもらえたら、その情報を元にお話ししていけるので。

坂本 何も要望なく「何ポンドで張ったらいいか?」と聞かれるより「こうしたいんだけど……?」と言っていただけたら、それに応えやすいですね。

廣島 先ほどスイートスポットに求める硬さで張り方を変えるという話がありましたが、張り方によってそういう効果が生まれるという認識が、まだユーザーさんに浸透していません。

坂本 そう思います。自分のガットがどう張られているか、興味を持ってほしいですね。

廣島 張り方は本当にさまざまで、効果が出るものですから、選手が悩みや気になることを言ってくれればアドバイスや張りの提案ができるかもしれません。張りを変えてみて、プレーして、また気になったことを教えてくれれば、さらに対応していく。

坂本 その積み重ねですね。

廣島 たとえばガットが急に切れてしまったときにも、いつもの張り方がわかっていれば対応できますから。

坂本 たしかに毎年大きな大会直前になって「切れたので今すぐ張ってもらえませんか」というお客さんが来ます。

廣島 本来はガットの力が最大限に発揮されるのは張り替えた直後です。しかし、ガットに興味があまりないと、自分のガットが今どのくらい摩耗(まもう)しているか、を認識していないんですね。

坂本 大会直前に張り替えるのは嫌という人は1週間前に張るようにするとか、メンテナンスに気を配ってほしい。万全の状態で、大会に挑んでほしいですから。ユーザーさんが気持ちよくプレーできるために、選手が納得した張りを実践していきたいと思います。

最後に~廣島ストリンガーより~

「もっとこだわりを!」
ガットの対談連載、いかがでしたか? 最後に選手にお伝えしたいのは、皆さんにぜひ、こだわりを持ってほしいということ。それぞれ、ガットへのこだわりを持ってもらえたほうが、役に立つアドバイスがしやすいですし、パフォーマンスの向上にもつながります。今のガットで力が発揮できていたら全然かまわないのですが、もし何か悩みがあれば、大会会場で張人にお気軽に声をかけてください。ガットが変わればプレーが変わります。ガットが生きれば、もっといいプレーができるという選手がまだいます。私たちももっと情報を発信していかなければと思っています。
①ガットの種類
②テンション
③張り方

大きくわけてこの3つで、ガットにはいろいろな組み合わせがあります。自分はこれだと決めつけずに、いろいろな感覚を得て、自分の中の答えを一緒に見つけていきましょう。(廣島敦司)

取材・構成 深作友子 写真 井出秀人

注目の記事



映画『案山子とラケット ~亜季と珠子の夏休み~』
ベースボール・マガジン社