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硬式×軟式、若きエースの共通点は「負けず嫌いのファイター」

硬式と軟式、若手トップの2人が、お互いの競技のことを語り合った。硬式で世界ランキング最高58位の西岡は、4年前のアジア競技大会で金メダルを獲得。同じ170cm、そのサイズに負けないように熟慮し、さまざまな工夫で勝負してきた。強い意志、それぞれの競技に賭ける思いも同じだった。対談第2回は硬式と軟式の共通点、相違点について語る。

小さい選手が勝つために、気持ちで負けない

――硬式の選手からヒントを得るソフトテニスのトップ選手もいます。例えば、船水選手はモンフィス(フランス)の試合からフットワークを学んだこともあるとか。

船水 楽天オープンを生で見て衝撃を受けました。ハードコートであんなに滑れるんだ、と。

西岡 彼は例外です。あんなに動ける選手はあまりいないし、いい選手です。

船水 スライディングをするのですが、あれは慣れですよね。

西岡 そうですね。

船水 自分もできるようになってきたのですが、ハードコートでプレーする機会自体が少ないので、試すチャンスが少ない。

西岡 スライドは慣れで、硬式ではだいたいの選手が滑れる。芝でもスライドできる人もいますし、逆にしなくても強い人もいる。自分はできないとコートカバーリングができない。フェデラーのような立ち位置が良くて、ボールへの入りが毎回最短でできる人は滑らなくてもいいでしょう。自分のようなタイプは、リーチも短いので、スライドしないと届かない。生命線でもあります。

――国内には170cmの選手はたくさんいますが、グランドスラムなど世界の舞台では驚かれるでしょう。

西岡 メディアが面白がります。カロビッチのような2m11cmの選手とやって勝てば、そういうことは言われます。これだけの身長差で勝っている、となります。

――その身長で、グランドスラムで勝ちたいというのが出発点ですか。

西岡 そうですね。現に今年のフレンチ・オープンで170cmの選手がベスト8に入っているので、可能性はあると思います。

――その挑戦で何が必要でしたか。

西岡 小さい選手が勝っていくためには、気持ちがファイターでなければ無理と、ジュニアの頃から言われていました。エースを必ず取れるわけではないし、泥臭くテニスをするしか勝ち目がない。それを続けられる精神力がないと勝っていけません。それが最低限。そこから、フットワークや技術が出てくる。気持ちでどれだけ他の人に負けないか。

自分はめちゃくちゃ負けず嫌いで、そこが人一倍強いと思っています。同じ170cmのシュワルツマンも負けず嫌いで、すごいファイター。毎ポイント頑張っています。そういう姿勢がチャンスを広げていき、逆に大きい選手たちからすると、すばしっこいので何度も何度もボールを返してくる。結果、ラリーが長くなり、相手からすれば嫌なのです。相手はエースを決めて、早く試合を終わらせたい。こちらからすれば、試合を長引かせるのはいい。向こうは嫌なので、どんどん嫌にさせる。これは大事かなと思い、試合前から心掛けています。

――船水選手はファイターの部分などは共感しますか。

船水 自分もシュワルツマンが好きで、気持ちが分かるというか。昨年楽天オープンでゴファンとやった試合を初めて見たのですが、前に出られて、拾って、返して、次決めてと、うまく戦っていたのを見て、通じるものがある、気持ちがよく分かりますね。

西岡 彼とはそんなに話したことはないですが、日本と違い、彼の国で170cmは相当低い身長なので、自分たちよりもタフな道程を歩んできたと思います。自分もアメリカに行った時、“170cmで世界は無理”とずっと言われましたから。“150位は超えられない”と。そういう中でやってきたので、彼もそういう部分を乗り越えてきたので強いかなと。自分としても尊敬しています。1回試合をしたいですね。どっちがちょっと大きいかを決めたくて(笑)。

アルゼンチンのシュワルツマン。フレンチオープンでベスト8に入った 写真:Getty Images

短期集中と長期集中、競技特性の違い

――気持ち以外に、身体的、技術的にこういうところを成長してきたというのはありますか

西岡 15歳まで三重県でトレーニングしてきたのですが、年齢も低かったので、トレーニングの内容はランニングやフットワークの練習が中心でした。テニスの練習も1日2時間程度です。アメリカで本格的にトレーニングを始めましたが、ジュニアだったので、まだ何がいいか分からなかったですが、ケガもあり、今になってトレーニングは大切だったなと感じています。

自分の生命線は動きで、フットワークと反応の良さ、1歩目の速さとか切り返しの良さです。そういう部分が大事で、もちろん筋肉面、ウエイトトレーニングも必要ですが、筋肉をつけ過ぎるのも良くないので、今は体重管理をしっかりしています。

現在は栄養士さんについてもらい、自分のベストの64kgを維持するために、月に1回、身体組成を測り、体脂肪と筋肉量などを見ながら食事の内容を決めてもらいます。身体的に大事なのは動きの部分、トレーニングがどうテニスに生きるかを考えて、取り組んでいます。

船水 競技性がありますよね。硬式は試合時間が長く、自分たちは1試合が短い。

西岡 軟式の方が短期集中ですが、自分たちは長期。1時間半から長ければ4時間とかあります。だから、体力をどう維持していくか。集中して、抜く時間も必要で、それを繰り返しながら、どう配分するか。そう考えると軟式は短い。

船水 どんな強い選手でも最初取れないと終わりですね。最初の2ゲームは落とせない。取り返しがつかない。

西岡 短期集中、長期集中で、ちょっと違いますね。

船水 逆に硬式の選手が4ゲーム先取だとどういうメンタリティーで入るのでしょうか。

西岡 実はアンダー21のツアー最終戦で4ゲーム先取の5セットマッチがルールとして採用されました。テニス界はどれだけ時間を短縮できるかが課題でもあるのです。実際にも最初取れないと次のセットだという感じになる、違った展開で面白かったですが、実際の試合時間はそう変わらなかったですね。これを3セットまで短くすると緊張感は出ると思いました。

船水 硬式だと強い選手がほとんど勝ち上がりますよね。軟式の場合は差がないので、いくら強くても1回戦で負けることもあります。硬式の上位のメンバーはそんなに変わらない印象です。

西岡 ベスト4に残っているのは決まっている4人とか。時代もありますが、今は上が強すぎて、そこに若手が入ってきたという状況でしょう。

船水選手のソフトテニス用ラケットを持った印象は「軽い」と西岡選手

西岡良仁
プロテニスプレーヤー/ミキハウス
にしおか・よしひと●1995年9月27日生まれ、22歳。三重県出身。170cm、64kg。左利き。橋北中→青森山田高。小学生3冠を達成し、中学3年の夏から(公財)盛田正明テニスファンドの支援を受け、IMGアカデミーへ留学。2014年1月にプロ転向、同年のUSオープンでグランドスラム大会デビュー。直後のアジア競技大会で金メダルを獲得。世界ランキングは58位までアップさせたが、2017年3月のマイアミで左足の前十字靭帯を負傷。リハビリから復帰した。

船水颯人
ソフトテニスプレーヤー/早稲田大
ふねみず・はやと●1997年1月24日生まれ、21歳。青森県出身。170cm、右利き/後衛。黒石烏城クラブ→黒石中→東北高→早稲田大4年。全日本シングルスで史上最年少優勝を果たし、天皇杯、全日本インドアのタイトルも持つ。単複で日本を代表するプレーヤー。2015年世界選手権で日本代表に初選出され、国別対抗金メダル獲得に貢献。2018年アジア競技大会日本代表

※Vol.3は8月10日公開予定。この対談は、ソフトテニス・マガジン9月号(7月27日発売)、テニス・マガジン9月号(7月21日発売)に掲載したものです。


構成◎内田麻衣子 写真◎馬場高志

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