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【村上雄人インタビュー前編】引退、監督就任! 「進化するチャンスはどこにでも潜んでいる」

 NTT西日本は新体制となって、村上雄人新監督、丸中大明コーチが誕生した。ここではソフトテニス・マガジン6月号で掲載したインタビューを再掲載。二人とも大きくない身体で、長くチームでプレー。しかも、大きなケガを克服して、さまざまなことを経験してきた人たちだ。

――引退からすぐに監督就任でした。

村上 引き受けるかどうかは正直、悩みましたが、監督は誰でもオファーされるものではありません。本当に幸せなことで14年間、選手としてプレーしてこのチーム、この環境でなければ今までの成績は絶対に出せなかったと思っています。このチームには本当に感謝の気持ちでいっぱいで、自分を成長させてもらいました。次は自分が指導者として、選手を成長させたいと思いで引き受けました。

――引退されるきっかけは。

村上 うちのチームはトップを目指す義務があると思っています。そうでなければ引退された諸先輩方・後輩達に失礼だと思います。2年ほど前にテニス肘の重傷化したケガをして、1年前の4月末にアキレス腱を断裂。それぞれリハビリをして再びトップを目指すのですが、ケガが治って、試合に勝つことよりもテニスができる楽しさを強く感じるようになりました。もちろん、楽しさがある上にトップを目指すのがあると考えるべきですが、楽しさだけというのはこのチームとしては違うのかなと思うようになったことも引退するきっかけにはあります。以前なら、日本代表になりたい、世界選手権、アジア大会で金メダルを取りたい、とかを思ってプレーしていましたから、意識が少しずつ違ってきました。

――スポーツ選手で37歳というのは簡単ではないですね。ケアも必要ですし。

村上 若い頃はどちらかというとトレーニングがメインで、正直ケアは入念にはしていませんでしたし、知識もありませんでした。30代になってからケアのことは気にするようになりましたが、ここ2年間以外はほとんど大きな怪我はなかったのは若い頃にトレーニングをしていたからと思っています。ですが、年を重ねるごとにトレーニング方法・量は変えていかなければならないですし、ケアの割合も増やしていかなければなりません。そこをここ数年で見誤っていたんだと思います。

――コーチをする上では良い経験でしたね。村上/長江のテニスはまったく年齢を感じさせなかった。

村上 ちょうど長江さんと組んだのはコロナ期間中でした。モチベーションが下がることはなく、テニスに対する志や考え方を振り返れたことや1つの技術にああでもない、こうでもないと長江さんと話合いながら練習できたのは本当に充実していました。身体の衰えはありましたが、その分、思考力があがったことが良かったと思います。

――30代半ばの2人で優勝していたのはすごいことですね。

村上 若い選手が活躍して、自分が何か変わらないと若手に勝てないのは分かっていました。躊躇なく、新しいことを素直に受け入れましたし、若い頃は、知識がなくても身体が動くので、どちらかというと身体のセンサーは鈍感で、技術に関しても今ある技術の精度を高めていくような練習しかしなかったですね。年齢とともに新しいことを取り入れた時に身体の反応が分かるようになってきた。数年でしたが、長江さんと組んで本当に成長できました。長江さんの前では年齢がとか、身体の衰えがとかは言えませんが(笑)。

――若い頃から大きな大会を優勝してきました。

村上 国内は中学で都道府県、高校でインターハイを獲って、天皇杯も勝てたのですが、日本代表として国際大会に1回でも出場したいという思いはずっとありました。予選会・合宿でチャンスはあったと思うのですが、そこをつかみきれなかった。本当にチャンスをものにできなかったので後悔しています。

――コロナで202021年は国際大会が中止に。

村上 試合はやりたかったですが、コロナで試合がない期間は考える時間がたくさんあり、自分と向き合えた時でした。チームとしてもその期間で人間力を上げるためやモチベーションを上げるために11つテーマを自分で決めて、そのテーマをプレゼンスすることや他にも相手の分析だったりといろいろなことをやりました。あれで選手として大きく成長できたと思います。

――日本代表になっていないから、毎年の大きなモチベーションになってきた。

村上 そうですね。それはずっと自分の中にはありました。その気持ちでやっていましたから。特に2015年シーズンは中本と組み、西、社会人とタイトルをとり天皇杯で準優勝、全日本シングルスも成績を出せて、日本開催のアジア選手権で代表になれるチャンスかなと思っていました。あそこで代表に選ばれなかったからその思いをずっと持ち、モチベーションにつながっていたかもしれませんね。

続く

むらかみ・ゆうと●198899日生まれ。愛知県出身。佐屋ジュニア(小3)→七宝中→三重高→愛知学院大→NTT西日本。168cmA型。右利き・後衛。2003年都道府県対抗全中優勝。2005年インターハイ個人優勝(/黒羽祥平)。2006年全日本高校選抜優勝。20132015年全日本社会人選手権優勝(/中本圭哉)。2017年天皇杯優勝(水澤悠太/)。2022年東京インドア優勝(/長江光一)。20112024年日本リーグ・STリーグ優勝。

長江光一とのベテランペアでも充実した時間を過ごした

 

文◎福田達 写真◎西田泰輔
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