
【硬式テニスから学ぶ】将来のために子供たちが知るべきこと
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スポーツを取り巻く環境は社会的な背景の変化もあり、子供たちの成長の方法はかつてとは違ってきた。かつてなら、公園でキャッチボールは当たり前だったが、ボールで遊ぶこと自体ができなくなっているようだ。もちろん、IT化が子供たちの遊びも変えていき、
成長に自然と備わったものが今はなくなっているとも聞く。硬式テニスで子供たちの未来を描いてきた神谷コーチに、現代で必要な運動を中心に教えてもらった。なお、今回は群馬県太田市で年に1度開催されてきた、硬式とソフトテニスのコラボ講習会にうかがった。
小さい時にこそ
やるべきだったこと
小さい時にやるべき能力というのは結構あります。選手をたくさん見てきて、一番チェックしてきたのは柔軟性です。これは日々の継続した努力でしか身につきません。誰でもできることなのです。筋トレでマッチョになるのは簡単ではないですし、時間がかかります。一番簡単にできるのはストレッチです。身体が硬いことはケガにもつながるし、パワーを出すときに可動域が広ければ広いほどパワーは出しやすい。有名なアスリートたちの共通点は柔軟性を持っています。筋力は大きくなっているのに、柔軟性を保つことは難しい。パワーを出すためやケガの防止で大切な要素ですが、柔軟性がないというのはそれまでのアプローチで間違っているのです。選手に出会った時に一番チェックするのはここで、意外に柔軟性を向上させてこなかった選手が多いのです。
これはどのスポーツでも同じです。メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手も柔軟性は素晴らしいですし、ゴルフの松山英樹選手もそうですね。柔軟性が絶対的に必要で、ケガがしにくい身体になり、リカバリーもしやすい。少し早い時期にテニスをスタートして、打法を覚えた選手は、柔軟性がなくても何とか勝てる時期はあるかもしれませんが、それを成長してから直すのは大変です。後々壁にぶち当たったり、大きなケガをしたりします。柔軟性はテニスにとってひとつの鍵だと思います。
人の身体は見た目には違うけど、構造的には同じですね。構造がどういうふうに、劣化しているのか、進化しているかの差なので、どういうふうに鍛えていけばよいのか。つまり、動物化していけばいいと思います。人間は二足歩行で動いていますが、投動作(上で投げる)ができるのは人間だけなのです。投動作で肩甲骨を縦に使うのは大変な作業で、どういうふうに身体を作っていくのか。それはトレーニングしない限り不可能なのです。トレーニングしたことで身につけていくので、特に肩はユニットで動いているので、それを最初に理解させないとうまくいかない。小さな子供に手を上げて見なさいと言うと、手は上に上がらない。横が精一杯です。関節の構造上そうなっているのを徐々に変えていく。
例えば、子供たちと打法の話をする時に、魚を例に出します。魚が泳いでいる時にどこが動いているかと考えてもらいます。魚はひれが動いているように見えますが、身体の幹が動いていて、その振動がひれに伝わっているに過ぎないのです。動物のイルカにしても、幹が動いて、ひれに伝わって、ひれの力が大きくて、飛び跳ねたり、ジャンプしたりできます。あくまで、エネルギーは中からです。
しかし、型から入るとエネルギーは末端からになるのです。スイングの考え方もすべて中からだと理解できた子たちは成長していきます。いくら言っても、ひれを動かす子はそうはいかないのです。ここを導けるようにメニューを組んでいます。
ストレッチング
01 スクワット系ストレッチ
❶足を平行に開いて、しゃがみ、足をつかむ(①、②)。この足を持った状態で足を伸ばす(③)、しゃがむを10回繰り返してみよう。
❷同じように足を持ったところから片方の手を伸ばす(④)、その指先を見たら(⑤)、戻す。左右繰り返す。
02開脚系ストレッチ
❶開脚する(⑥)。つま先を上にあげる(⑦)。このままの状態から肘を床につける(⑧、⑨)。「これだけ柔軟性があると、動く範囲が広がるので、結果的にパワーを出しやすいのです。テニスだけでなく、成功しているアスリートは筋肉がたくさんついているけど、身体は柔らかいのです。年齢を重ねても、柔軟性は保ちましょう」
❷開脚から、片方の足だけを前に出す(⑪)。その足の方に身体を倒していく(⑫)。左右両方する。
03ワールドグレイテストストレッチ
❶片方の足を前に出す(⑬)。前の足の内側に両手をつける(⑭)。足に近い方の腕を曲げる(⑮)。前の足の方の腕を上に伸ばす(⑯)、戻す(⑰)を繰り返す。
04ツイスト系ストレッチ(膝)
❶仰向け。膝を少し曲げて(⑱)、左右に倒して(⑲、⑳)、戻す。
❷片方の足をまっすぐ上げて(㉑)、左右に倒して(㉒、㉓)、戻す。
コーディネーショントレーニング
01スリーピングキャッチ
2人1組。一人が仰向けに寝る。もう一人は顔の上にボールを持って、落とす(①)。それを寝ている方はキャッチする(②)。慣れてきたら、両手を伸ばして(③)、そこからキャッチ(④)する。
02スリーピングキャッチ応用版
ボールを落として、キャッチする。次にボールを落としたら(⑤)、手を1回たたいて(⑥)、キャッチする(⑦)。さらに、2回手をたたいてキャッチ、3回と回数を増やしていく。今度は、ボールを落としたら、上でたたいて(⑧)、バウンドしたボールの下でたたいて(⑨)キャッチする(⑩)。その逆、下でたたいて、上でたたいてキャッチもしてみよう。
03ボール交換
2人1組。お互いボールを1個持ち、相手とボールを交換する(少し上に投げる、⑪、⑫)。キャッチしたら、すぐに繰り返すので、止まらない。最初は両手を使って行うが、片手だけで行ったり(⑬、⑭)、足を動かしながらしたりとレベルを上げていく(⑮、⑯)。さらには2ステップを入れたりすれば、テニスの動きのフットワークになる。自然とテニスのフットワークと動きを覚えていくトレーニングでもある。
04バイト・キャッチ
❶飛んできたボールをキャッチする時に、「バイト(くわえる)」でキャッチする(17)。ダメなキャッチ例は「受ける」(18)。
❷飛んできたボールの関係性を作り、触っているだけなので、ラケットのフレークやグリップで返球してみる(19、20)。飛んできたボールに対して、目の中でボールとの関係性を作って、触っている。ボールと道具の位置関係(タイミング)が分かる。さらに、あたる瞬間にラケット面を向けてみよう。フォア、バック、グリップもいろいろ変えてみよう。飛んできたボールにタイミングを重視して、面を向けるとどうなるかを分かることは大事(ラケットを振り回すのではなく、面を向けている、21)。力も不要なのも分かる。
❸同じ動きで、ストロークでやってみる。
❹バウンドしたボールをストロークのつもりで、手でキャッチしてみる(22)。その時に手は上にあるか、下にあるか。これは上にあるべきで、ラケットを持っても同じ(23)。速いテンポの現代テニスは上にある。下げるとエネルギーを出しにくくなる。ラケットを持った時に、ラケットヘッドを下げないということにつながる。これは硬式、ソフトテニスともに同じだ。慣れてくれば、前でキャッチする。