「一度、スポーツナロさんに来てみたかったんです」
そう言って来店されたのは、北海道・札幌で小学校の先生をされている若い男性。幼い頃から陸上競技に打ち込んでいたそうですが、教員になって出場した教員大会をきっかけに、ソフトテニスの魅力に目覚めたとのこと。今ではYouTubeやSNSを活用し、独学で技術を磨いているそうです。
大人になってから新たにソフトテニスに挑戦してくれる人がいる──そのことが、私たちは何よりうれしいのです。
中学校部活動の「地域移行」が、現在の教育・スポーツ界で大きな転換点を迎えています。ソフトテニスも例外ではなく、部活動の地域展開という新しいスタイルにあわせて、これまで学校中心だった育成の在り方が大きく変わり始めています。
そうした中、私たちがもう一つ見つめ直さなければならないのが、「人口減少」の現実です。これまで日本ソフトテニス連盟および各都道府県連盟は、小学生から大学生、社会人まで、段階的な競技継続を前提に活動や大会を開催してきました。しかし今後、子どもたちの数が減っていくなかで、その土台にだけ頼っていては競技の将来は細くなる一方です。
そこで注目すべきは、「大人になってからのソフトテニス」です。すでにプレーから離れてしまった人や、学生時代に経験がありながら機会を失っていた人たちに、もう一度ラケットを握ってもらう。あるいは、まったくの未経験者が気軽にチャレンジできる環境を整える。それこそが、これからのソフトテニス界を支える「第二の柱」になるはずです。
他競技を見てみると、そのヒントがたくさんあります。たとえば、バドミントン界では「大人から始めるバドミントン教室」が全国各地で展開されています。バレーボールでは元全日本選手が講師となる「ゆるバレー」教室が好評で、未経験者やブランクのある人たちを積極的に巻き込んでいます。
また、日本サッカー協会の「なでしこひろば」は、初心者の女性が楽しめる場を全国で提供。バスケットボールや卓球も、商業施設や地域体育館を活用した初心者向けイベントを盛んに行っています。
さらに注目を集めているのが、アメリカ発の「ピックルボール」。ラケットスポーツ初心者や中高年層を中心に、誰もが楽しめる競技として急速に人気が広がっています。その背景には、「入りやすさ」、「教室の分かりやすさ」、「対戦の気軽さ」という三拍子が揃っていることがあります。ソフトテニスにも、この視点が欠かせません。
日本ソフトテニス連盟が主導して、各地で次のような取り組みは如何でしょうか。
●ブランクのある人が集うイベント「リターンプレーヤー・デー」の開催
例えば、ソフトテニス部のOB会開催に際し、ラケットやボールを無償提供する。
●ジュニアチーム対抗パパ・ママ大会の開催または交流会
●出張ソフトテニス体験会
①公園や観光地などで行う。
②日本に在住する外国人や、観光で訪れるインバウンド層にも着目。英語や多言語に対応した体験会や、観光地での「日本文化体験+ソフトテニス」イベントなど、国際交流を軸にした企画もです。それらのポイントは「勝敗」や「技術」よりも、「気軽さ」と「楽しさ」。かつての経験していた人たちにとっては、「また、あの感覚を思い出せた」「仲間と再会できた」ことが喜びとなり、未経験者にとっては「思ったより簡単だった」「楽しかった」が次につながる一歩になります。
これからのソフトテニスは、若年層育成と並んで、生涯スポーツとしての広がりが求められています。すべての人が、いつからでも、どこからでもソフトテニスを始められる。そんな雰囲気をつくるために、今こそ、日本ソフトテニス連盟が先頭に立って、全国の市町村連盟が先頭に立って、アクションを起こすのはいかがでしょうか。
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PROFILE
皆呂充亮
みなろ・みつあき
(株)スポーツナロ代表取締役。東京都代々木にあるスポーツナロを経営と同時に、講習会、イベント、試合運営などで人気