私は現在、法政大学大学院で「ソフトテニス選手のキャリア開発支援」について研究しています。その中で、多くのソフトテニス関係者に協力いただき、アンケート調査を実施しました。今回から数回に分けて、結果の一部をご紹介します。
本研究のアンケート調査では、ソフトテニス経験者の競技経験、競技から学んだこと(社会人基礎力やキャリア意識)、成長の各段階でキャリアに影響を与えた人(アントラージュ)、現役時代の振り返り(やってよかったこと、やればよかったこと)などについて伺いました。
アンケートは、大学の体育会ソフトテニス部経験者を対象にオンライン(Google Form)で2025年7-8月に実施しました。「謝辞」に示した大学に協力いただき、現役大学生153名と卒業生261名の計414名の回答を得ました。参考として、同時期に別途調査した中堅私立文系大学生274名の数値と比較しました。
なお、 社会人基礎力やキャリア意識項目は、9段階の自己評価を用いています。「9:完全にあてはまる、8:とてもあてはまる、7:あてはまる、6:若干あてはまる、5:どちらでもない、4:若干あてはまらない、3:あてはまらない、2:ほとんどあてはまらない、1:完全にあてはまらない」の9段階です。
図は、前回の本コラムでご説明した「社会人基礎力(12の能力要素)」について、体育会ソフトテニス部の現役大学生(ST学生、153名)と、中堅私大の一般学生(非ST学生、274名)の平均値を比較した結果です。ST学生、非ST学生とも、男女比はおよそ7:3、学年は2,3年生が中心であるため、比較し得ると判断しました。
私は調査前に、ソフトテニス学生が一般学生より、社会人基礎力が少しは高い結果になることを期待していました。しかし結果は、私の予想を大きく超えるものでした。図の12項目すべてで、明らかにST学生(左棒)の方が、非ST学生(右棒)より平均値が高かったのです。これは、ST学生の社会人基礎力の自己評価が、一般的な学生より全般的にかなり高いことを示します。これはソフトテニス競技を通じて育まれた、「ST学生の価値」といえるでしょう。
平均値の差が大きい順に並べると、⑥創造力(1.35)、⑤計画力(1.29)、③実行力(1.26)、①主体性(1.14)、④課題発見力(1.14)の5項目が1ポイント以上、ST学生の方が高い数字を示しました。次いで、②働きかけ力(0.99)、⑦発信力(0.90)も大きな差でした。これらの項目は、特にソフトテニス競技を行うことで、一般学生より高い自己評価につながったと考えられます。
もう一つの特徴として、ST学生は最も高い項目である⑪規律性(7.79)と、最も低い項目である ⑦発信力(6.61)の差が1.18と、比較的小さい数字でした。一方、比較の非ST学生では、最も高い⑪規律性(7.16)と、最も低い⑥創造力(5.29)の差は1.87でした。このことから、ST学生は社会人基礎力の12項目を、バランスよく獲得していると考えられます。さらに、ここでは詳細は割愛しますが、他競技での先行研究と比較しても、ST学生の自己評価の平均値は高い傾向にあります。
このデータは、「ソフトテニスの人材育成上の価値」を示すものです。ソフトテニスに関わるすべての方(競技者、保護者、指導者など)に、この競技の価値を再認識していただく機会になればと思います。
謝辞:本アンケート調査では、東京六大学(法政、明治、早稲田、慶応義塾、立教、東京)、関西六大学(同志社、関西学院、関西、立命館、京都、神戸)、日本体育大、帝京大、東京経済大、北翔大、神戸松蔭大などの体育会ソフトテニス部のOB会組織を通じて、現役選手およびOBOGに依頼し、ご協力いただきました。その結果、414名という非常に多くの方にご協力いただくことができ、説得力のある調査になりました。あらためて、御礼申し上げます。
<プロフィール>
山岸慎司 やまぎし・しんじ
日本ソフトテニス連盟国際委員、スポーツ庁管轄アスリートキャリアコーディネーター、国家資格キャリアコンサルタント。企業研修講師および東京経済大学講師(キャリア関連講座)。東京大学農学部修士、ロンドン大学経営学修士。現在、法政大学キャリアデザイン学部大学院でソフトテニス選手のキャリア開発支援を研究中。著書『成功する就活の教科書』(中央経済社)他。ポッドキャスト番組『2030年のキャリア戦略』毎週木曜配信
