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【2025年回顧、2026年への挑戦】①内本隆文[NTT西日本]◎10年ぶりの日本開催の国際大会へ。競技の魅力が詰まった試合を見せる。

 アジア選手権で韓国、台湾を圧倒するためにペア結成となった。8月下旬の全日本社会人に出場すると、その強さは明らかだった。早稲田大時代も団体戦で組んだ経験はあったが、さらに成熟して、お互いの良さを生かし合える間柄になっていたのだ。その思惑通り、アジア選手権では個人ダブルスで優勝して、負け知らず。ただ、その後の全日本選手権の準々決勝敗退が、さらに二人の意識を高めた。たった一度の敗戦から学び、レベルを上げようとするのは、トップに立つ選手の姿勢。2026年は日本開催のアジア競技大会だけでなく、すべて負けずに終わる準備をする。

Takafumi UCHIMOTO

 喜びも悔しさも経験し、新たな手応えも感じた1年となった。今季、アジア選手権大会の男子ダブルスを制した内本隆文/上松俊貴。内本はNTT西日本ブルーグランツ、そして日本代表の主将として日本のソフトテニス界を引っ張り、上松は男子シングルスで前人未到の国際大会3連覇を成し遂げた。一方で、直後の天皇杯ではベスト8。G4ー0から逆転を許す、屈辱的な敗戦も経験した。

 主将として駆け抜けた1年。内本は今季をこう総括した。
「70点でした。これ以上ないほど、アジア選手権にかけて戦えたっていうところがあって、それに伴って結果もついてきた。ただ、その後の天皇杯ではちょっといろいろ失敗してしまったから、それも含めて70点ぐらいかな」。

 2024年はケガにも苦しみ、日本代表から選出漏れした。日本で見ていた世界選手権――。代わって初選出されたのは上岡俊介だった。日の丸を背負って戦う上宮高の後輩を見て、「もう一回、代表を目指そう」。そういった思いが強くなった。

 「今年は自分をすごく強くしてくれた1年でした。技術的な上達もそうですが、シーズンを通してどのような取り組みをすべきなのかを考え、それを遂行することができました。少しずつ考え方やテニスに対する価値観が変わり、それに伴って取り組む姿勢が変わってきたことが自分でも分かりました。それから日常生活でも『勝つためにどうするべきか』というのをいろいろ考えながら1年間取り組めたのが一番大きかったんじゃないかなと思います」

 そんな中、転機になったのは昨年12月。船水颯人の韓国挑戦だった。早稲田大時代から内本の上には常に船水の存在があった。渡韓は直接告げられた。「最初は受け入れられなかった。2人で食事をしているのにも関わらず、ポジティブな言葉が出てこなくて沈黙でした(笑)」と振り返る。

 「ずっと背中を追いかけてきた人がいざいなくなった時に責任感がのしかかってきたことを今でも覚えています。日本のソフトテニス界を牽引し、船水さんが日本を強くしたと言っても過言ではない。その人の取り組み、思考だったりを少しでも後輩たちに継承し、日本のソフトテニス界を引っ張っていかなければならないと思っていました」

 船水が抜けたアジア選手権で代表復帰。主将として男子ダブルス、男子団体を手にし、圧倒的な成績を収めた。中でも個人決勝は上岡俊介/丸山海斗ペアとの日本人対決。内本にとっては、元ペアと後輩の対決だった。

 「素直にうれしかったです。ずっとやってきたパートナーであり、後輩であり。同じチームでやってきた仲間と最後にアジア選手権の決勝で戦えたのは、この大会で勝つためにみんなで取り組んできたこと自体が間違いではなかったという証明にもなりましたから」

 G⑤-0で圧倒し、自身初の栄冠に輝いた。その後の男子団体も決勝では韓国のダブルフォワード相手にストロークを中心としたプレーで圧倒。7種目中6種目を手にした。その一方で、帰国直後に行われた天皇杯では屈辱的な敗戦を喫した。

「失敗したな、というのが一番。なぜこういうメンタリティで試合をしてしまったのか……。今年はアジア選手権にピークを持っていっていました。そこから1か月ちょっとで天皇杯が開催されましたが、今まで自然と集中して練習できていたことが『集中しなきゃいけない』となっていました。勝ち続けることがどれだけ難しいことなのかを改めて痛感した大会でもありました」

 橋場柊一郎/菊山太陽との準々決勝も決して悪かったわけではなかった。G4―0と序盤は圧倒。しかし、ジワジワと追い上げられる。何度もマッチポイントを握ったが、あと1点が遠かった。態勢を崩されたわけではなかったが、劣勢になった時に流れを変える手を打てなかった。
「アグレッシブさが足りなかったと感じています。(アジア選手権のサーフェスだった)クレーの時はダブルフォワードへの対応をメインでやっていたから、後ろベースの戦いが増えていました。レシーブ打った後も下がって。それを(天皇杯でも)そのまましちゃった。どこかで流れを変えるっていうこともできなかった。自分の技術だけで勝ち上がったから、流れが悪かった時に陣形を変えるとか、そういうことができなかったのが正直なところです」

 対する橋場/菊山はG0-4からサービスダッシュで並行陣を組むなど、流れを変える一手を打ってきていました。正直、別に崩されていたわけでもないのですが、でも、相手がリズムをつかんできたのは分かっていました。どんどんメンタルが悪くなって。ポンポンと先攻できたからこそ、流れが悪くなった時に難しかったですね」

 喜びも悔しさも経験した1年。すでに目線は2026年、日本で開催されるアジア競技大会を向けている。
「今が一番、技術も、メンタルも高い状態だと思います。同時に、できることが増えたからこその難しさもあります。まずは日本代表に選出されて、応援してくださる皆の前で金メダルを取ること。あと個人のタイトルもほしいと思っているので、シングルスとミックス、そこにも挑戦してみようとは思っています」とそう力を込めた。

(続く)

PROFILE
うちもと・たかふみ●1998年2月19日、大阪府出身。172cm、65kg。右利き・後衛。藤井寺ジュニア(6歳)→上宮中→上宮高→早稲田大→NTT西日本。▼国内大会・2008年春の全小4年生以下優勝(/丸山海斗)。2009年春の全小5年生優勝(/丸山海斗)、全日本小学生個人優勝(/丸山海斗)。2011全中団体優勝、2012年都道府県対抗個人優勝(/丸山海斗)、全中団体優勝。2015年インターハイ団体優勝、個人優勝(/丸山海斗)。2016年インカレ団体優勝。2017年インカレ団体優勝。2019年インカレ団体優勝、シングルス優勝。2020年日本リーグ優勝。2022年全日本社会人優勝(/内田理久)、国体優勝。2025年全日本社会人優勝(/上松俊貴)。▼国際大会・2016年アジア選手権シングルス金メダル、ダブルス銀メダル(/丸山海斗)。2019年世界選手権国別対抗金メダル、ミックスダブルス3位(/黒木瑠璃華)。2023年アジア競技大会国別対抗金メダル。2025年アジア選手権国別対抗金メダル、ダブルス金メダル(/上松俊貴)

写真◎西田泰輔
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