TOPICS
プレー&コラム
2018.05.14

ピンチは一番オモシロい。「こんな緊張感を味わえるなんて」と、まさにこの瞬間をプラスにとらえよう

ソフトテニスに効くメンタルトレーニング講座Vol.48(最終回)  講師◎大儀見浩介

関連キーワード:

試合前や試合中の逆境やピンチへの対処法をお届け。逆境やピンチに負けない心は自分でつくることができます。あなたの心を強くするのは、あなた自身です。

緊張はボリューム。調整が必要

 人は基本的に誰もが緊張しています。筋肉が緊張するから、物も持てるし、包丁を持ったら危ない、信号を渡るとき車に気をつけようと思えるのです。緊張は、注意力に結びついています。

 ただし、ボリュームと一緒で緊張も調整が必要です。どんなに素晴らしい音楽でも、爆音で聞いたら騒音ですが、音が小さすぎたら聞こえません。ほど良いハーモニーで聞こえるようにボリュームを調整しますね。同じように、緊張のボリュームを調整する力が、セルフコントロールです。リラックスと緊張のバランスをちょうど真ん中に持っていくための工夫をしましょう。

Q 相手のピンチ、自分のチャンスにイージーミスしてしまう理由が知りたい。

 理由は2つあって、
①チャンスだという油断からいい加減なミスが起きる
②「チャンス=簡単」だからミスできないと考えて、力が入ってミスしてしまう

 つまり、イージーミスは油断か過緊張のどちらかです。こういうときは、あえてチャレンジしてみましょう。ソフトテニスという競技のルールの中で、相手の嫌なことをしていく、自分らしいチャレンジのあるプレーをしていきます。

 そして、ピンチだとかチャンスだとか思うのは、相手から送られたメッセージに集中している状態ですから、自分が主体的に集中しなければいけません。どこを見るのか、何をするのか、自分で集中を高めていかなければならないのです。

「ヨシ、いつも通り」「どんな球でもこい、返せるぞ」と、まずは深呼吸してコートに入り、自分の視点で集中します。そして、目の前のことをやりきればいい。あきらめない気持ちとはやりきることです。ピンチもチャンスもない、いつものテニスをする。“ピンチのテニス”と“チャンスのテニス”と考えると、イージーミスが生まれてしまいます。

Q 一球でもミスしてしまうとへこんでしまいます。

 一球ミスするごとに「ヤバい」「どうしよう」と、相手に集中させられる状態が続いてしまっていますね。さらに質問者の方は、自分をへこませることに集中しています。そうではなく、一球ミスしたら、次の球はどうしようと、本気で考えればいいでしょう。次の第一歩に集中するんです。

 試合中に修整できないことは、トレーニングで克服していけばいい。ミス=気づき、発見、成長、進化、グレードアップです。「新しい課題が見つかったぞ」と喜んで受け止めましょう。

Q ファイナルでデュースになったときのメンタルの対処法。

 これも、あきらめない気持ちが大事です。今、自分が何をやりきるかをはっきりすればいい。「ピンチだからやること」「チャンスだからやること」というのはないんです。いつもと同じことをやるだけ。

 どうしても不安がよぎったり、ビビってしまった場合は対処法として、声を出す、気持ちを切り替えるルーティンを入れる、深呼吸をするなど。とにかく気持ちを切り換えて、次の第一歩をいつも通り踏み出しましょう。

Q 自分より弱いと分かっている相手と戦うときに力が入ってしまう。

 自分より弱い相手とやるのだから勝って当然、負けるわけにいかないと、結果だけを考えています。相手が自分より弱い強いではなく、自分が実力を発揮する場所です。

 質問者の方に必要なのは、イメージトレーニングです。勝ち負けのイメージではなく、自分の武器となるプレー、自分のベストプレーのイメージをつくっていきます。

 そして、このタイプの選手は、相手に手の内を読まれやすいプレーをしている可能性があります。試合中のちょっとした工夫や駆け引きを一流選手から学び、それをイメトレするのもいいかもしれませんね。

Q ラストポイントの時にどうしても平常心でいられない。

 この方も、ラストポイントだからと結果を考え過ぎています。どうやって最後のポイントを取るかのイメージを持つといいです。こう仕掛けて、最後は得意のバックで決めるというように、どうやってラストポイントまでのプランを考えることに全力を傾けましょう。

Q 試合で、あと1点取られたら終わるという時も、攻めにいけない。

 ピンチなのに受け身になってチャレンジできない――能動的な集中をつくる努力をして、相手に受動的な集中を持たせます。相手を逆に「あと1点だから」と力が入りすぎる状態に導けたらオモシロいですね。そして、ミスしてもいいから、自分の武器で勝負して、自分のすべてを出しきりましょう。全力に悔いなしです。試合が終わるまで勝負は何が起きるか分かりません。

 こんな考え方もできます。ピンチって、実は一番オモシロいんです。あなたは今、最後の1ポイントを争い、しのぎを削り合っている。『こんな緊張感を味わえるなんて、今までテニスをやってきて良かった! この緊張も、残り1点取られたら終わってしまう!』と、まさにこの瞬間をプラスにとらえてほしいのです。

意識して実践すれば、無意識でもできるようになる!

 最後になりましたが、この連載でも何度かお伝えしてきた通り、メンタルトレーニングは魔法ではありません。考え方のトレーニングです。考え方が変わっていけば、当然、感じ取り方も変わってきます。おのずと行動も変わってくるのです。

 心はトレーニングで強くしていくことができます。そして、心は自分でしか強くしていくことができません。自分のやる気を上げられるのは自分だけです。やる気が上がったと感じ取れるのは自分だけだからです。

 周りの選手と比較したり、自分をランキングしたりすることもあるでしょうが、大切なのは自分です。自分で自分の心を強くしていくために、気持ちの切り替えだったり、部活や勉強のやる気を、意識して実践的に高めていく。

 最初は意識して努力しないとできなかったことが、3か月、半年、1年と経てば、段々と無意識でできるようになるはずです。その過程で、ここはイメージトレーニングだ、ポジティブリフレイミングを試してみようというように、これまでの連載で紹介してきた心理スキルを思い出して、役立ててくれたら、うれしいです。

 


著者Profile 大儀見浩介●おおぎみ・こうすけ
東海大一中(現・東海大学付属翔洋高等学校中等部)サッカー部時代に全国優勝を経験。東海大一高ではサッカー部主将、東海大学進学後、高妻容一研究室にて応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)を学び、現在はスポーツだけでなく、教育、受験対策、ビジネス、社員研修など、さまざまな分野でメンタルトレーニングを指導している。2012年、メンタルトレーニングを広く伝えるために「株式会社メンタリスタ」を立ち上げる。著書に『クリスチアーノ・ロナウドはなぜ5歩下がるのか~サッカー世界一わかりやすいメンタルトレーニング』(フロムワン)、『勝つ人のメンタル~トップアスリートに学ぶ心を鍛える法』(日経プレミアシリーズ)。年間約250本の講演活動を行っている。

注目の記事



映画『案山子とラケット ~亜季と珠子の夏休み~』
ベースボール・マガジン社