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「あのショットが打てれば勝てる」インド遠征でグリップを変えた

フリーグリップとは、状況に応じてグリップの握り方を柔軟に変えること。船水颯人がフリーグリップを強く意識するようになったのは、アンダーのインド遠征で外国人選手の硬式テニスに影響を受けたショットに触れたときだという。年々、高速化するテニスに対応するため、グリップを持ち変えながら、どんなコースにも打てるように。

ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第8回は、フリーグリップについて。

船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大

裏面スライスに「そのコースに打ってくるのか」

――前回、高校時代にグリップの握り方を変えたことで、「今の自分がある」と話していました。「フリーグリップ」という言葉を使っていましたね。

あくまで、僕の考えで話しますが、ソフトテニスは昔に比べると、格段にスピードアップしていると思います。特にシングルスは、カット、スライスなども使いますし、一つのグリップだけでは対応できない場面が増えています。状況に応じて、グリップを持ち変えないと追いつけないんです。

――フリーグリップに取り組むようになったのは?

東北高3年のとき、世界ジュニア(2014年11月にインドで開催)に出場してからです。

外国人選手はイースタン(硬式テニスの標準グリップ)で硬式のような打ち方している人が多く、裏面でスライスを打ったり、日本人選手とは明らかに面の使い方が違っていました。ウエスタン(ソフトテニスの標準グリップ)では打てない角度のついたショットを受けて、「やられたな」と感じることが多かった。「そのコースに打ってくるのか」って。

そのとき、ラケットの裏面を使う技術の必要性を感じましたね。状況に合わせてグリップを持ち変え、いろんなコースを狙えるようにするのが理想だと思いました。

――ウエスタングリップで裏面を使うのは……。

ボールの当て方もありますが、難しいですね。外国人選手は、(イースタンで裏面を使い)硬式のようなショットを打ってくるんです。硬式の低いネットだから打てるようなボールが、ソフトテニスのネットでも、ぎりぎりの高さで飛んでくる。正直、日本人選手では見たことがありませんでした。「僕もあのショットが打てれば勝てる」、そう思ってグリップを変えたんです。

緊張感がある中で試すことに意味がある

――フリーグリップにすることで、どのような効果が出ましたか。

とっさの判断で必要なグリップに持ち変え、無理なく打てるようになりました。今は頭で考えるよりも、カラダが自然と動く感じです。

もちろん、最初は思うように打てなかったです。グリップの感覚をつかめるようになるまでは、繰り返し、練習しました。2、3カ月はかかりましたね。今、振り返れば、高校2年生までは「今のままでいい」というマインドで、新しいことにあまり挑戦していなかったんです。あそこで、逃げずにチャレンジしたことが良かったと思います。

――フリーグリップに慣れるまで2、3カ月間は、我慢する必要があったと。

練習試合などで、「ここ」という1本だけ持ち方を変えて打ったり、試行錯誤でした。試合でチャレンジしないと、身につかなかったと思います。練習ではいくらでもミスできますが、試合ではその1本が負けにつながる。それでも、緊張感がある中で試すことに意味があります。もちろん、そのせいで練習試合に負けることもありましたけど、そこは気にしなかったです。

――2、3カ月後、手ごたえを感じたのは?

プレーに安定感が出てきて、結果が出ました。余裕も出てきましたし、それまで多かったミスも減ったと思います。

――余裕とは?

難しいコースにきて、無理やり打っていた場面でも、グリップを持ち変えることで楽に打ち返せるようになりました。面が安定したのは大きいです。

こっちは体勢が崩れていても、相手にそれを気づかれることなく、普通に打ち返すことができるようになりました。ショットの種類が増え、打てるコースも広がったと思います。

この体勢からでも、裏面でバックで返す。2016アジア選手権のシングルスにて

――フリーグリップだと、どの握り方にするのか、とっさの判断が必要になります。

状況判断力は、これまでの経験で鍛えられたと思います。子供の頃から型にハマった指導を受けてこなかったので、グリップも自由な持ち方をしていましたし(笑)、遊びながらテニスをしてきたのが良かったのかもしれないですね。自然とカラダが動くんです。

――これからフリーグリップに挑戦する選手にアドバイスをお願いします。

僕の基準ですが、いい意味で遊びながら取り組むほうがいいと思います。普通に打てるボールでも、わざとグリップを持ち変えて打ってみたり。そうすることで、ちょっとした感覚がつかめるかもしれないです。

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次回は3月16日(木)に公開予定です。

取材・構成◎杉園昌之 インタビュー写真◎阿部卓功 プレー写真◎福地和男
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