
【キャリアデザイン入門~競技から学べること】第2回◎人生100年時代のキャリアモデルとは

去る6月21日に開催された日本ソフトテニス連盟(JSTA)の創立100周年記念式典において、JSTAのミッション・ビジョン・バリュー(MVV)が発表されました。ミッションには「ソフトテニスを通じて、自分らしい人生を築く」という文言が入りました。この連載の主旨とも呼応しています。
今回は、ソフトテニス選手に限らず、若者世代が人生キャリアを考える上で必要な「人生100年時代のキャリアモデル」について説明します。約9年前、ロンドン大学教授の著書、『ライフシフト~100年時代の人生戦略』がベストセラーになりました。図は、この本に示されたキャリアモデルを、私が日本社会向けに模式化したものです。
まず上段の「昭和モデル」は、1950~80年代です。当時、多くの人は20歳前後まで教育を受け、その後、企業勤めであれば定年の55歳まで30年余り働き、65~70歳で寿命を迎えました。昭和を代表するアニメ『サザエさん』のお父さん、磯野波平さんは、なんと「54歳」です。意外に若くて驚きですよね。ちなみにサザエさんも、まだ24歳です。24歳で、もう3歳の子ども、タラちゃんがいます。その頃は会社の定年が55歳で、波平さんはあと1年で定年退職を迎える、典型的なサラリーマンという設定でした。戦後の昭和は高度成長期で、1つの仕事で、大きなキャリアチェンジをする必要もなく、会社に人生を預けていれば、平均的な幸せが手に入ることが多かったのです。
中段の「平成モデル」は、1990~2010年代です。平均寿命が大幅に伸びたため、定年も延びて、60~65歳になりました。引退後の期間も長くなり、85~90歳で寿命を迎えるのが平均的です。現在の中高年の多くは、長い引退後を支える年金制度が危うくなり、想定していたより長く働かないといけないという不安に駆られています。
そして下段の「令和モデル」は、2020年代以降です。現在の若者は、医療などがさらに進歩することで、寿命が100歳以上になります。仕事の期間も延び、20歳前後から80歳過ぎまで、約60年間、働く必要があります。60年の間には、社会や仕事が大きく変化します。そこで若者世代に必要なのは、1つの会社や仕事に依存せず、途中で何度か主体的に「学び直し」や 「仕切り直し(転職や職種転換)」をして、時代ニーズに合った仕事・職種に自分を変化させていくことです。「人生の主人公は自分」と考え、変化をおそれず、学び続ける姿勢が大切です。副業、NPO、地域活動なども、変化のヒントになり得ます。そのため、国も副業で新たなスキルを身につけることを支援し始めています。
ソフトテニス選手についても、学校卒業後に、実業団選手やプロ選手としてトップレベルで競技を継続する場合も、そうではない多くの人の場合も、5~10年単位で、人生キャリアを考え続ける必要があります。これが、「人生100年時代のキャリアモデル」です。
PROFILE
山岸慎司 やまぎし・しんじ
日本ソフトテニス連盟国際委員、スポーツ庁管轄アスリートキャリアコーディネーター、国家資格キャリアコンサルタント。企業研修講師および東京経済大学講師(キャリア関連講座)。東京大学農学部修士、ロンドン大学経営学修士。現在、法政大学キャリアデザイン学部大学院でソフトテニス選手のキャリア開発支援を研究中。著書『成功する就活の教科書』(中央経済社)他。ポッドキャスト番組『2030年のキャリア戦略』毎週木曜配信。