
『みんなのインターハイ』特別編・「一緒にインターハイに行こう」を実現した城所結菜/服部麻衣(豊橋中央・愛知)の快進撃、ダブル前衛で優勝候補を撃破
中国総体2025(女子)◎7月29日~31日 山口県宇部市・宇部市中央公園テニスコート

8月27日(水)発売のソフトテニス・マガジン10月号は、高校生の夏の祭典・中国インターハイを大特集。山口県宇部市の宇部中央公園テニスコートで行われた男女の熱い戦いを、通常よりも16ページ増の大容量で詳しくお伝えします。
収録している企画の一つが、毎年恒例となっている『みんなのインターハイ』。優勝争いとは別に、夢の舞台に臨んだ選手やチームの思い、舞台裏の情景を、男女それぞれお届けします。今回ソフトテニスマガジン・ポータルでは特別編として、本誌に掲載できなかった女子のエピソードを紹介。1年間の取り組みの成果を発揮して優勝候補を破り、全国の舞台で躍動したペアをピックアップします。
「めっちゃ楽しめました!」
7月29日、女子個人戦1日目。318ペアが出場して3回戦までを消化する戦いの結果が、会場の一角に設置されたトーナメント表に書き込まれていく。コートを移動する際に前を通りかかると、女子生徒の驚きの声が聞こえてきた。
「えっ、四天王寺が負けたの?」
6月のハイスクールジャパンカップ・ダブルスで準優勝し、優勝候補に挙げる声もあった四天王寺(大阪)の房野紗千/市川こいとが、初戦の2回戦で敗れた。G④-2で驚きの結果をもたらしたのは、豊橋中央(愛知)の3年生ペア、城所結菜/服部麻衣。1回戦に続いての勝利で、3回戦にも勝って2日目に勝ち残った。
豊橋中央は団体戦に出場しておらず、個人戦も2人が唯一の出場。強敵を破る原動力となったのが、ダブル前衛でのアグレッシブな戦いだった。雁行陣かと思いきや、展開を見極めながら2人で前に詰めて、相手に圧力をかけていく。
2回戦では、先に一度試合をしているアドバンテージを生かした。城所は「自分たちは一度(1回戦で)試合に入っていて、相手は初戦。自分たちも緊張していたけど、それ以上に相手が緊張しているように見えたから、攻撃をやめず、波に乗っていこうと思った」と語る。服部は「試合後にみんなから『おめでとう』と声を掛けてもらって、初めて勝ったことを実感した」そうだ。

「支えてもらった人たちに喜んでもらいたい」と燃えた城所

ジュニアでも城所と組んでいた服部。昨年からダブルフォワードを磨いてきた
豊川クラウンジュニア時代、小学6年生のときにペアを組んでいたが、それぞれ別の中学へ。しかし「中学3年生のとき、何かをきっかけに『もう一度、組みたいね』『一緒にインターハイに行こう』という話になって」(服部)、そろって豊橋中央に進学した。
どちらも後衛だったが、木村一裕監督が「中学時代は前衛の練習をしていませんでしたが、入学してからずっと前衛の練習をしてきて、少しずつ触ることができるようになってきた」のを機に、2年生の県総体で初めてダブル前衛に挑戦。いきなり形を変えた中で勝ち上がったものの、インハイ出場を懸けた一戦で敗れ、悔しい思いをした。
雪辱を期してダブル前衛を磨いてきた道のりでは「形が悪くなって、難しい時期があった」と服部は言う。それでも粘り強く連係を磨き、今年は雪辱を果たして悲願のインハイ出場を果たした。
2日目の4回戦も勝った2人は、5回戦で惜しくもファイナルの末に敗戦。それでも木村監督は「いろいろな方にアドバイスをもらってダブル前衛に挑戦して、1年間やってきた。120パーセントの力を出してくれた」と称えた。
2人の表情も晴れやかだった。城所は「小学4年生からソフトテニスをやってきて、全国大会に出るのが夢でしたが、ずっと出られませんでした。初めての全国という舞台で、家族や支えてくれた人たちに少しでも喜んでもらえるようなプレーがしたかった」と振り返り、「2日目に残れて、そこでも1勝できた。最後の試合は悔しさもあるけど、やりきれたことの方が多いのでよかった」と笑顔。服部も「1年前に県総体で負けて、人間性など技術以外のことも学んできました。インハイで一番良いダブル前衛を作れた。結果は悔しいですが、会場を沸かせることができたうれしさもありました。めっちゃ楽しめました!」と声を弾ませた。

要所で力強いストロークも見せた城所

素早く前に詰めるなど積極的なプレーを見せた服部

以前は中学校の教員で、豊橋中央に赴任して3年目の木村監督。2人の奮闘を称えた