TOPICS
プレー&コラム
2026.01.03

【Champion’s talk】第80回全日本選手権優勝①橋場柊一郎×菊山太陽[法政大]◎あきらめたことはない。

関連キーワード:

第80回全日本選手権は男女ともに初優勝だった。観客席からの大きな歓声が印象に残った大会で、若い選手たちが自分たちの力を発揮した。今回はその勝者たちに、頂点までの歩みと、優勝を導いてくれた成長点などを訊いた。

――決勝戦で有明コロシアムのセンターコートに立っていて、どう感じましたか。昨年まではあと1勝で立てなかった舞台です。
菊山 朝の練習に行った時に、やっとここでできるんだという緊張感がありました。昨年は準々決勝で負けましたから。
――終盤は菊山選手が観客席を釘付けにしていました。
菊山 ほとんど法政のメンバーのいる方しか見ていないですが、楽しかったですね。
橋場 集中していましたが、冷静にも戦えていまいた。プレーが終わった時、観客席から大きな歓声をいただいているのが聞こえていました。そういうところでずっとテニスをしたかったので興奮もしましたし、ずっとあそこでやることが目標で、過去2年は観客席で見ていたので、やっとここでできたなと思っていました。
――簡単に決まらないハードコートの特徴が随所に見られて、選手たちはいろいろな手を打ちながら戦っていたと思うのですが、そのあたりはどうでしたか。
菊山 ラリーが長く、下半身に負担がかかり、ファイナルなど長い試合も多く、しんどい状況で中盤は何を考えていたのか分からないぐらいの時もありました。
橋場 僕は砂入り人工芝でも一発で決めるような後衛ではないので、しつこく、粘り強く戦うのが自分の良さと思っているので、ハードコートに合っています。長いラリーになればなるほど自分の良さが出てくるし、菊も触れる回数、チャンスが増える。長いラリーを嫌がらなかったのが良かったと思います。
――ショーコートの準々決勝(対内本/上松)はすごい試合でした。
橋場 0-4になっても、試合の始まりから最後まで気持ちのメンタル的なブレはまったくなかったです。0-4になっても相手が強いので仕方なく、そこで厳しいかな、負けちゃうというのはなくて、少し戦い方を変えて1本ずつ取っていけば絶対にチャンスが来ると思ってやっていました。実際に流れが来ていましたし。よくあきらめなかったねと言われましたが、あきらめたことはまったくなく、ずっと勝ちたいと思って戦っていました。
菊山 0-4なった瞬間にヤバいかなと思いましたが、負けるとは考えていなかった。負けるぐらいならやりたいことしようと思っていて、それがいい方向になっていき、1ゲーム奪えた時にいけるかもと感じました。そこからあきらめず、最後まで戦えました。
――組み合わせを見た時にあの試合を乗り越えないと目標としているコロシアムの準決勝には行けないのが分かったはずですが、どう感じていましたか。
橋場 その前の安藤/安藤も強くて逆転勝ちでしたが、内本/上松と対戦するドローを見た時に、少しうれしかったのです。アジア選手権を優勝して今一番強いペアと準々決勝でやれるということは、そこで自分たちが勝てばその先も乗っていけると思っていたし、学生よりも、めちゃくちゃ強い人たちと4掛けで対戦できるのなら、そこまで行ければ楽しみだなと感じていました。コロシアムに行きたいだけなら準決勝で対戦するドローの方がよかったですが、強い先輩方を越えないといつまでたっても上にいけないので、そこは頑張りたいと感じて、うれしい気持ちになりました。
――アジア競技大会は同じハードコートで、これだけのパフォーマンスを見せたのは第一歩ではないですか。アジア競技大会への思いを教えてください。
橋場 アジア競技大会に出たい人はたくさんいますが、その人たちよりも出たいと思っています。今回ダブルスで勝てましたが、このようなパフォーマンスを安定して見せていかないといけないですし、シングルスではもっと運動量が多くなるので、そういうところで自分の良さが出ると思います。代表予選会まで3カ月ほどですが、シングルスになると戦術も変わってきて、新しくしながらも安定感を上げていきたいです。
――全日本シングルスは準優勝であと一つでした。
橋場 あと一つという感覚もありますが、そこまでいくのが大変だったので、あと一つよりは強い先輩方がたくさんいるので、結果よりも自分のプレーにこだわっていけば、自ずといい結果が出ると思っています。
菊山 1回は出てみたいという気持ちはあったので、天皇杯優勝して、このままの流れに乗っていければ、出場したいなと思います。

挫折を自分で抜け出せた経験

――橋場選手はいつもあきらめない気持ちは試合からも、試合後の言葉からも伝わってきますが、挫折は経験したことはありますか。
橋場 高校2年の時にインターハイにいけなかったのですが、その時がそうで、あきらめようというのではなくて、何をやってもうまくいかないなという感じでした。そこでまったく結果が出なくて思うようにできなかった1年間でした。
――自分でどうにかしていったわけですか。
橋場 高校で乗りきれたかというとそこまで結果は残していないので、そうは言いきれないですが、高校2年の時は自分の代になっても団体戦のメンバーも入れない状況だったので、絶対にこのままで終わりたくないという気持ちで、とにかく何がダメなのかを考えて自分に向き合い続けました。変わらずあきらめずに取り組み続けることで挫折を残り越えられると信じて、ある程度のところまで抜けたかなと感じていました。
――その時期は苦しさもありましたか。
橋場 苦しかった。自分の同期が活躍していて、1軍のコートで練習もできず、隣のコートなどから同期の姿を見ていると、焦りとか、このままでは絶対に終われない、絶対に頑張るというものが出ていたと思います。
――自分の力で乗り越えたことはその先につながりましたか。
橋場 つながりましたね。それ以上に挫折することはないのかなと思いますし、そこでも1回もあきらめなかったので、自分の力で抜け出せたのは一つの自信で、普通のテニス選手で終わるか、一流のテニス選手になっていけるかのターニングポイントだったと思っています。あの時期の負け方をしないようになりました。それだけ当時は後悔するような負け方をしていましたから。もうそういう負け方はしていないと思います。
――試合後にお話を聞いて、勝っても、負けても、ほとんどネガティブな話を聞いたことがないので。
橋場 どんな状況でも無理だという感情にはならないです。
――試合中、選手の内面はゆれ動くと思うのですが、それは大きな部分ですね。ダブルスはペアで戦うので、二人があきらめるような感情にはならないのが強みですね。
橋場 天皇杯の準々決勝は、マジで2人で助け合って、最初は太陽が盛り返してくれて、その後は自分が盛り返して、最後は二人で噛み合って、いいプレーできていました。あの相手に逆転勝ちできたのは自信になると思います。
――菊山選手は高校3年時に同期よりも1年早くナショナル入りしています。
菊山 聞いた時はびっくりしました。どうして入れたんだろうと。トップ選手の先輩方がたくさんいて、消極的な面が出たというか、ここで自分がやっていいのかという気持ちで、なじめていなかったと思います。何をしたらいいんだろうと。
――菊山選手らしくない側面ですね。
菊山 そうですね。でも無理でした(笑)。こわくて。
――いい経験でしたか。
菊山 いろんなところを見られて、学べました。振り返ったら、一人だったので、得したなと。
――前衛の人から学んだことはありますか。
菊山 上松さんと一緒の部屋になることが多くて、夜とか戦術的な面で聞いたりしたことはありました。こういうことしてみたらとか言っていただいて、正解は自分で見つけなというアドバイスをもらったりもしました。あそこにいないとできないことで、あの経験は大きいことでした。
――今は後輩も多くなりました。
菊山 自分なりには距離を詰めようとはしていますが…。
――テニスを支える側に興味があると以前は言われていましたが、今もその気持ちはありますか。
菊山 いろいろサポートしてくれる人たちが周囲にいて、感謝しないといけないし、将来そちら側にいった場合に、選手をいい方向に導いていける人になりたいです。

Toichiro  HASHIBA
好きなコート  明日香庭球場、有明センターコート(コロシアム)
好きな本  GRIT(やり抜く力)
好きな映画  TOKYO MER
好きな食べ物  焼肉
尊敬する人  船水颯人
MBTI  ESFP
リラックス方法  温泉
座右の銘  誰でもできることを誰もできないぐらいやる
テニスを始めたきっかけ  父が指導者
1日生まれ変わるとしたら  大谷翔平
今後の野望  カッコよくて、強くて、応援される選手になる
テニスとは  身体の一部

PROFILE
はしば・とういちろう●2005年1月20日、岩手県生まれ。173cm。左利き、後衛。洋野NSTC(小3)→中野中→高田商業高→法政大。2019年都道府県全中団体準優勝。2022年全日本高校選抜準優勝、国体優勝。2023年インカレシングルス優勝。2024年大学王座準優勝、インカレ選手権優勝(/菊山太陽)、大学対抗準優勝、国体優勝。2025年全日本シングルス準優勝、インカレ大学対抗優勝・シングルス優勝。全日本選手権優勝(/菊山太陽)。

Taiyo  KIKUYAMA
好きな映画  キングダム
好きな食べ物  すき焼き
尊敬する人  森川亮介
MBTI  ENFP
リラックス方法  寝る
マイブーム  ラーメン巡り
テニスを始めたきっかけ  姉の影響
1日生まれ変わるとしたら  大谷翔平
今後の野望  愛されたい
あなたにとってテニスとは  たまにやるには楽しい

PROFILE
きくやま・たいよう●2004年8月2日、三重県生まれ。180㎝。右利き、前衛。津ジュニア(5歳)→西和中→高田商業高→法政大。2019年都道府県全中ダブルス優勝(山下琥太郎/)。2022年全日本高校選抜準優勝、インターハイ個人優勝(野口快/)、国体優勝。2024年大学王座準優勝、インカレ選手権優勝(橋場柊一郎/)、シングルス準優勝・大学対抗準優勝、国体優勝。2025年インカレ大学対抗優勝。全日本選手権優勝(橋場柊一郎/)。

文◎福田達 写真◎井出秀人