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2026.02.21

【2025年回顧、2026年への挑戦】②上松俊貴[NTT西日本]◎10年ぶりの日本開催の国際大会へ。競技の魅力が詰まった試合を見せる。

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 アジア選手権で韓国、台湾を圧倒するためにペア結成となった。8月下旬の全日本社会人に出場すると、その強さは明らかだった。早稲田大時代も団体戦で組んだ経験はあったが、さらに成熟して、お互いの良さを生かし合える間柄になっていたのだ。その思惑通り、アジア選手権では個人ダブルスで優勝して、負け知らず。ただ、その後の全日本選手権の準々決勝敗退が、さらに二人の意識を高めた。たった一度の敗戦から学び、レベルを上げようとするのは、トップに立つ選手の姿勢。2026年は日本開催のアジア競技大会だけでなく、すべて負けずに終わる準備をする。

Toshiki UEMATSU

 上松にとっても激動の1年だった。全日本シングルスでは前人未到の4連覇、アジア選手権でも他者を寄せつけないプレーで金メダルを獲得した。シングルスは大会の最初の競技。チームに勢いをもたらす上で日本選手の1位は欠かせなかった。

「シングルスはアジア選手権で最初の競技だし、日本人がタイトルを取れば、その後の種目も日本勢として勢いに乗るっていうのは、国際大会を経験して僕は重々承知していましたから。自分の中で『自分が取って、日本がいいスタートだ』っていうように意識をして、誰かに譲るつもりもなかったです」

 2023年のアジア競技大会、2024年の世界選手権でも金メダル。残すはアジア選手権のみだった。一方で、今大会、上松はシングルスの他に男子ダブルス(内本隆文)、混合ダブルス(前田梨緒)、男子団体と全種目でエントリー。日本のエースとしてどれも落としてはいけない中で、シングルスは常人には理解できないようなメンタルで戦っていた。

「自分が目標にしていたのは、とにかく失ゲームを少なくすること。相手にゲームを取られない、っていうことだけを考えていました。そういう勝ち方を自分の中でやろうって決めていましたから。決勝は1ゲーム取られたけど、その中でうまく切り替えられました」

 その言葉通りの活躍だった。2回戦から準決勝まで失ゲーム0。左右に力強いストロークで振り、相手の体制が崩れたところで前に上がってとどめを刺す。決勝では広岡宙がファイナルゲームで敗れた台湾のチェン・ポイに1ゲーム取られたが、苦しい場面はほとんどなかった。G④-1で勝利。アジア競技大会、2024年の世界選手権でも金メダル。世界の選手たちが打倒・上松で来ることは分かっていた。それでも、他者を寄せつけないテニスで圧倒した。

 “温存はその後に生きた。ダブルスではダブルフォワード相手に内本とコンビで圧倒。「内本さんが本当にすごくて。僕のやりたいようにやらせてくれたんですよね」。

 決勝では上岡/丸山と対戦。「上岡、内本さんは、本当に世界で見てもトップの2人だから。あのラリー力とボレーの精度とか展開力というのは本当、ずば抜けている中で、プレーできるのはペアとしてもうれしい」と振り返った。

23年、24年のアジア競技大会、世界選手権と比べて、団体戦が終わった後の疲労の具合は全然違いました。その分、トレーニングの量も上げていたし鍛えていた部分もあるけど、もう1周行けるなってくらいの感覚はありました」

 チームに勢いをもたらしたシングルスの勝利。一方で、今大会で唯一、金を逃したのがミックスダブルスだった。基本的には他チームの選手と組み、ましてや男女でプレースタイルも大きく変わる。今大会は準決勝で敗れ3位に終わった。

「世界選手権も2位で負けていて、ミックスは女性と組む難しさがあります。男子ダブルスとは違う動き方とか配球があって。ただ、昨年全日本ミックスダブルスで初めて勝利して、そこから手応えを感じる部分がありました」

 混合ダブルスの初タイトルは高橋乃綾と組んだ2023年のアジア競技大会以来だった。ただ当時の勝利はたまたま勝てたという印象が強いという。

3年前のアジア競技大会の前は、本当にミックスに自信がなくて、戦い方も分からない。どうしようみたいな、すごくモヤモヤしていました。高橋さんと組んで、徐々に見つけられた感じでした。男子ダブルスみたいに『久しぶりにペア組むね』みたいな感じでパッとやって、パッとハマるっていうのがなかなかない競技。そこの難しさは本当に感じますね。その中でも、キーポイントは男子の決定力。どれだけ相手をかき回して、コート中動き回って点を取れるかっていうのもすごく重要視されるのかなと思います」

 来季のアジア競技大会の個人競技はシングルス、混合ミックスのみになる。

「どうしても、ミックスの個人タイトルはすごい重要視されます。他のライバルも皆強いから。『自分が取るんだ』、『奪い取るんだ』という強い気持ちで、本当にチャレンジャーの気持ちでやります」と意気込む。

 そんな上松は2025年を80点と総括した。届かなかった20点は、内本と同じ、天皇杯のタイトルだ。内本はアジア選手権直後の難しさを痛感していたが、上松が感じていたのはまた一つ違う難しさだった。

「アジア選手権を優勝して、内本/上松としてもとても自信にもなったし、プラスに動いた部分も多かったのですが、優勝した形が良すぎて、そこに固執してしまった部分は少しあって。もう少し、戦略的にも柔軟に、選択肢を増やすこともできた。もちろん、増やし過ぎると迷いが生じてしまう部分もあるんですけど、自分たちの同じテニスにこだわりすぎてしまった」

 来季の目標に「日本の国内大会の全タイトル、国際大会の全タイトル獲得」と意気込む上松。「アジア競技大会は地元の日本開催だし、もう1回、国際大会の2周目をスタートさせる意味でも、3冠からスタートして、1周目よりいい成績を残したい」。

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 主将として船水に代わり日本のソフトテニス界を牽引した内本に、前人未到の国際大会シングルス3連覇と絶対的な王者となった上松。ともに来季は29歳、28歳と選手としては中盤の域に差し掛かるが、まだまだ下の世代に引導を渡すつもりはない。

PROFILE

うえまつ・としき●1998611日、岡山県出身。181㎝、73㎏。右利き・前衛。岡山Kids岡山理大附中→岡山理大附高→早稲田大→NTT西日本。▼国内大会・2009年全小団体優勝。2010年全小団体優勝、個人優勝(/)。2012年全中個人優勝。2013年全中個人優勝。2016年インターハイ個人優勝(本倉健太郎/)。2017年インカレ大学対抗優勝。2018年全日本選手権優勝(船水颯人/)。2019年全日本選手権優勝(船水颯人/)。2022年全日本シングルス優勝、全日本選手権優勝(船水颯人/)。2023年全日本シングルス優勝、全日本社会人優勝(船水颯人/)、全日本選手権準優勝(船水颯人/)。2024年全日本シングルス優勝、全日本社会人優勝。全日本選手権優勝(船水颯人/)。2025年全日本シングルス優勝。▼国際大会・2016年アジア選手権ダブルス金メダル(船水颯人/)。2018年アジア競技大会国別対抗銀メダル、ミックスダブルス3位(林田リコ/)。2023年アジア競技大会国別対抗金メダル、シングルス金メダル、ミックスダブルス金メダル(高橋乃綾/)。2024年世界選手権国別対抗金メダル、シングルス金メダル、ミックスダブルス銀メダル(高橋乃綾/)。2025年アジア選手権国別対抗金メダル、シングルス金メダル、ダブルス金メダル(内本隆文/)。ミックスダブルス銅メダル(前田梨緒/)。

写真◎西田泰輔