『キャリアデザイン入門~競技から学べること』第9回 インターハイ出場経験者の社会人基礎力
前回に引き続き、私の法政大学での「ソフトテニス選手のキャリア開発支援」研究の一部として実施したアンケート調査についてご紹介します。本調査は、大学の体育会ソフトテニス(以下、ST)部経験者を対象にオンラインで2025年夏に実施しました。約20大学にご協力いただき、現役大学生153名と卒業生261名の計414名の回答を得ました。おかげ様で、ST経験者の実態を把握するために十分な回答数を得られました。卒業生と在校生、性別、年齢層についても、以下のようにバランスよく回答が得られました。

<回答者のプロフィール>
(1) 卒業生または在校生(現役大学生) 卒業生63% (261名)、在校生 37% (153名)、計414名
在校生の学年内訳 1年12% (49名)、 2年10% (43名)、 3年7% (29名)、 4年以上8% (32名)
(2) 性別 男73% (304名)、女27% (110名)
(3) 年齢層 10代19% (79名)、20代23% (95名)、30代7% (28名)、40代8% (32名)、50代14% (58名)、60代20% (82名)、70代以上9% (40名)
<高校での競技実績>
本調査では、高校での競技実績について尋ねました。全国トップレベル(インターハイなどの全国大会で、個人または団体ベスト8以上)11% (47名)、全国レベル(インターハイなどの全国大会に、個人または団体で出場)24% (97名)、地域レベル(関東大会などの地域大会に、個人または団体で出場) 21% (86名)、上記以外44% (184名) という結果でした。高校で全国トップレベルは11%、全国レベルは24%で、計35% (144名)がインターハイ出場経験者でした。
インターハイに出場できるのは、男女それぞれ、団体48校(出場は各3ペア)、個人約300ペアです。団体と個人の重複出場も多いので、男女それぞれ700-800人、計1600人程度の狭き門でしょう。令和5年度の高校生の競技人口は約6万2000人であり、その中でインターハイに出場できるのは上位2-3%のトップ選手といえます。
さて上図は、前回までにご紹介した「社会人基礎力」について、高校でインターハイに出場経験のある大学ST部経験者(144名)と、大学ST部経験者全体(414名)の平均値を比較したものです。12項目の社会人基礎力について、「9:完全にあてはまる」から段階的に、「1:完全にあてはまらない」までの9段階の自己評価です。図で明らかなことは、12項目すべてにおいて、インターハイ出場経験者の方が、全体平均より高かったのです。これは、高校時代までにスポーツで高い目標を掲げ、日々厳しい練習を重ね、その結果としてインターハイに出場した人たちが、(大学での競技成績は別として)、インターハイには出場できなかった人を多く含む全体平均と比べて、社会人基礎力の自己評価が高かったということです。
前回、ST学生の方が一般学生(非ST学生)より社会人基礎力の全項目が高いことを示しました。つまり、ST経験者の社会人基礎力は、一般の人より高いと推察されますが、さらにインターハイ出場者は全世代平均で、ST経験者全体より高い数値だったのです。これは、スポーツで一流に到達した人たちの自己肯定感の高さを示すと考えられます。
あまりにも勝利至上主義に偏った指導は、中高校生の健全な育成を妨げる側面もあるかもしれませんが、今回の調査結果では、インターハイに出場することは、社会人基礎力の自己評価を高めるという意味で、キャリア開発の視点でも肯定的に捉えられます。スポーツで勝つことには、やはり意味があるのです。
ご協力いただいた大学:東京六大学、関西六大学、日本体育大、帝京大、東京経済大、北翔大、神戸松蔭大他
<プロフィール>
山岸慎司 やまぎし・しんじ
日本ソフトテニス連盟国際委員、スポーツ庁管轄アスリートキャリアコーディネーター、国家資格キャリアコンサルタント。企業研修講師および東京経済大学講師(キャリア関連講座)。東京大学農学部修士、ロンドン大学経営学修士。現在、法政大学キャリアデザイン学部大学院でソフトテニス選手のキャリア開発支援を研究中。著書『成功する就活の教科書』(中央経済社)他。ポッドキャスト番組『2030年のキャリア戦略』毎週木曜配信。



























