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2017.01.13

「充実した1年を過ごした」船水颯人、3週間1セットの調整法

【WEB連載】船水颯人『JKTへの道』#03 アジア選手権シングルスとピーキング

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「充実した1年を過ごした」と、船水颯人は2016年を振り返る。良い準備をして、最高の状態(ピーク)で大会を迎えるために、試行錯誤の末、自ら編み出した3週間1セットの調整法で、インカレ3冠(8月)、天皇杯(10月)、アジア選手権3冠(11月)と下半期をタイトルラッシュで駆け抜けた。

ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第3回はソフトテニス界の“キング”キム・ドンフンに敗れたアジア選手権シングルスと、ピーキングについて。

船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大

ドンフンに完敗で見えた課題

――アジア選手権のシングルス(2016年11月17、18日)を振り返ります。唯一金メダルを逃し、3回戦で敗退(ベスト16)しました。

迷いが多かった。スタイルが定まらず、「どうしよう」という気持ちで臨んでしまいました。ゲームプランが明確ではなかったですし、準備不足だったと思います。2015年はシングルスで勝てていたのですが(※)、さらに上を目指すために新しいことに挑戦していました。それを模索している途中にアジア選手権を迎えて……。

※2015年度は全日本シングルスで史上最年少優勝(18歳と113日)。2015年の世界選手権は国別対抗決勝にシングルスで出場して勝利、日本に金メダルをもたらした

――大会前に強く意識していたキム・ドンフン選手(韓国)に敗れたことについてはどう考えていますか。

もう少し何かできたはずだと思っています。正直、悔しい。今まで、試合であのような負け方をしたことがなかったので……。G2-④ですが、内容は完敗。何もできなかったです。差を見せつけられましたね。国内では味わえない経験でした。世界のトップレベルと戦って、実力不足を痛感しています。ただ、マイナスには捉えていません。

――マイナスには捉えていないとは?

シングルスに対する考え方が変わるきっかけになりました。あらためて、自分のプレースタイルを確立しないといけないと思いました。相手に合わせて柔軟に対応するのも僕の持ち味ですが、それだけでは勝てない。自分から仕掛けていくスピードとパワーを身につけないと、ドンフンとは戦えません。あの試合は、戦う土俵にも上がっていなかったと思っています。

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アジア選手権シングルスでキム・ドンフン(右)に敗れる。「精密なショットで崩されました」

増田さんはゲームの組み立てがうまかった

――キム・ドンフン選手とは、それほど差を感じたのですか。

ほかの韓国人選手は力強いストロークだけという印象があるのですが、あの日のドンフンは違いました。精密なショットで崩されました。届かないコースに打たれて、ペースを完全にもっていかれました。

――続く準々決勝の増田健人選手とキム・ドンフン選手の試合(G④-1で増田選手の勝利)は見ましたか。

はい。技術的なことを言えば、バックの精度が勝負のポイントになったと思います。(増田選手は)精度が違いました。フォアの角度が付いたボールを打ったりもしていましたが、最も効いていたのはバックの角度あるショット。あれを返すことで、ストレートが有効になっていました。ゲームの組み立てがうまかったですね。参考になりました。

――準決勝では、その増田選手を早稲田大の後輩である内本隆文選手が下し、続く決勝も制して金メダルを獲得しました。

(内本選手は)初出場で伸び伸びとプレーしていたと思いますが、結果を出したことはすごいことですね。試合後、「おめでとう」と声を掛けましたが、僕も悔しい思いをしていたので、そこまでは話していません。

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シングルスの敗因は「フィジカルの差」と。2017年はさらなる肉体強化を目指す

2017年は身体をイチから鍛え直す

――アジア選手権では、シングルスこそ16強でしたが、3種目で金メダル。国内でも、全日本インドア(/星野慎平)、インカレ3冠、天皇杯優勝(/星野)と、2016年は結果を残しています。

1年間を通し、ピーキング(コンディションのピークを合わせる)など試行錯誤していたので、そのなかで一つひとつのタイトルを取れたことは大きかったです。立て続けに大会があったので、それに照準を合わせてコンディションをつくり、戦っていました。すべて自己責任での調整です。トレーニング量を調節したり、練習法を変えたり、試しながらですが、うまくいきました。インカレ(8月)できっかけをつかみ、天皇杯(10月)でも同じスパンで調整して成功しました。3週間1セットで調子の上げ下げをしていたんです。アジア選手権でも、その方法でピークを合わせることができましたし、充実した1年間になったと思います。

――その3週間の調整方法を少し教えてもらっていいですか。

調整方法は人それぞれだと思いますが僕の場合はこうです。3週間前から大会に向けて身体を慣れさせ、2週間前になると、トレーニングの量を一気に増やして追い込みます。大会の1週間前にはほとんどボールを使った練習をしないで、調整していく感じです。大会前日は1時間ほどで切り上げます。それまでに、良い準備をしておくことが大事です。

高校生だったら、コーチ、先生が付いているので、個人の裁量に任される部分は少ないかもしれませんけど。早稲田大では自主性が尊重されるので、自分で考えてトレーニング、調整をしています。僕自身、それが目的でこの大学を選びました。トレーナーが近くにいないので、少し怖さはありますが、周りの意見を聞きながらうまくトレーニングができていると思っています。

――2017年は、どのような1年にしたいですか。

技術的なことよりも、身体をつくり直したいです。2016年も肉体強化には力を入れていたのですが、まだ足りません。実際にシングルスでは勝てなかったですから。レベルが上がってくると、最後は身体の差で結果が左右されます。もう一度、イチから鍛え直します。大学4年で迎える2018年のアジア競技大会に向け、2017年はいろんなことに挑戦したいと思っています。次も日本代表に選ばれる保証はないので、まずはメンバー入りできるようにしないといけませんね。

船水颯人が実践する『3週間1セットの調整法』
3週間前⇒大会に向けて身体を慣れさせる
2週間前⇒トレーニングの量を一気に増やして追い込む
1週間前⇒ほとんどボールを使った練習をしないで、調整していく
大会前日⇒練習は1時間ほどで切り上げる

次回#04は2月上旬に公開予定です。

>>船水颯人『JKTへの道』バックナンバー
#01 国際大会初の個人戦金メダルに「興奮しすぎました(笑)」 2016.12.30公開
#02 篠原さんを超えるのが目標だった。やっと本番で勝てました 2017.01.06公開

 

取材・構成◎杉園昌之 インタビュー写真◎阿部卓功 アジア選手権写真◎川口洋邦、福地和男