届かないボールに届くために。ハードコートでどれだけ「滑れる」か
【WEB連載】船水颯人『JKTへの道』#34 滑る話
2018年のアジア競技大会は男女シングルス、ミックスダブルス、国別対抗の全5種別。来年4月に行われる第18回アジア競技大会日本代表予選会はシングルスでの開催となった。ハードコートでのシングルスでカギになるのは「滑る」ことだという。
ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT・ソフトテニス競技はパレンバンで開催)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第34回は「滑る」話。
船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ、20歳。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大3年
鍛えてきたのは動きのスピードを上げるため
――日本連盟の機関誌で長江光一選手が第1回アジアカップ(8月)での、船水選手の体幹の強さについて触れていました。「抜群のフットワークでバックハンドに攻め込まれたボールをスライス回転ではなく、ドライブで対処していました。スプリットステップとフットワーク技術、そして体幹の強さがそれを支えていると感じました」と。
動きのスピードを上げるために体を鍛えてきましたから。速い展開になっても、ついていく体作りです。体勢が多少崩れても打ち返せるようにしています。
個人的にはクレーコートで思った通りに動けて、差し込まれても打ち返すことができたのは収穫でした。昨年11月から取り組んでいたことだったので。ただ、ハードコート(アジア競技大会)になると、また状況は変わってきます。
――パワーがついて、自身のテニスは変わりましたか。
いろいろな意見があると思いますが、僕は変化を実感しています。ただ、僕は速いボールを打つために筋力トレーニングをしてきたわけではありません。アスリートとして、必要最低限の体作りをしているだけです。
実際、打てるショットのバリエーションは増えました。2年前の全日本シングルスの優勝と今年の優勝とでは、試合内容が大きく違いますから。
「滑る」には、まず恐怖心を捨てること
――来年4月にアジア競技大会の日本代表予選会が行われます。2018年のアジア競技大会は、個人の種別から男女ダブルスがなくなり、男女シングルスとミックスダブルスです(国別対抗は2ダブルス&シングルス)。このレギュレーション変更についてはどう思いますか。
驚きましたが、決定事項なので受け入れるだけです。いまはシングルスに向けて準備をしています。ハードコートの練習量は増やしていかないと。
――ハードコートでシングルスを戦う上で気をつけるべきことは?
どれだけ「滑れる」かどうかです。ハードコートで滑るのは意外に難しくて。身長が高くて、リーチがあれば届くボールも、身長の低い僕は届かないので……。僕はあと一歩、半歩が足りないから。ハードコートは下(地面)が硬くて、ラリーが長くなる傾向にあるので、そこは気をつけたいです。
――「滑る」という感覚について、もう少し詳しく教えてください。
フットワークのスキルの一つです。ソフトテニスは、縦横にいかに動けるかどうかが大事なので。守備範囲は硬式テニスよりも広いと思います。
――その滑る練習はするのですか。
練習から慣れておかないとできません。まず恐怖心を捨てること。下に砂が敷いてあれば、滑るのですが、ハードコートのように下が硬いと簡単にはいきません。最初は怖いんですけどね。足首をひねって、ケガをする可能性もありますから。
――コツはあるのですか。
人それぞれの感覚だと思いますが、僕の場合は足のつき方ですね。ハードコートの練習環境がないので、難しいのですが、普段の砂入り人工芝コートから意識して練習しています。
――「恐怖心をなくすことが大事」と話していましたが、ケガはしないのですか。
最初はひねることもありましたが、慣れですね。
――ケガのリスクは高くないのですか。
怖いですよ。それでも、届かないボールに届くようになるから。
――昔から滑っていたのですか。
数年前、楽天オープンで硬式テニスのガエル・モンフィスの試合を見たのがきっかけでした。滑ってボールをよく拾っていたんです。ハードコートで、おかしいくらいに滑っていました(笑)。当時、ソフトテニス界では見たことがなかったですね。
――当時?
ソフトテニス界にもいるんですよ。2年前の世界選手権で対戦した中華台北の林佑沢選手。背は小さいのですが、うまく滑ってボールを拾っていました。
――身長が低いなりの工夫ですね。
そう。僕も含めて滑らないでボールに届けば、滑る必要はありませんから(笑)。
取材・構成◎杉園昌之 タイトル写真◎阿部卓功
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