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2020.03.10

「ファンを増やすことが選手価値を高めることを知っている」Masatoチャンネルでセルフブランディングする10代選手たち

荻原雅斗のカンボジア通信【不定期連載15】

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荻原さんの地元岐阜県で、鶯谷高の渡邉美野(中央左)/永田玲奈(中央右)と撮影。ノリがよい2人のほんわかした空気感で楽しく動画が進んでいく
ナショナルチームメンバーや実業団選手など、出演陣が豪華なMasatoチャンネル。最近では高校3年生や大学生など10代選手の登場もめずらしくなく、荻原さんとのボレーボレー対決や乱打対決が人気を集めている。なぜ、トップ選手が続々登場するのか。その理由を探った。
 
 荻原雅斗/おぎわら・まさと
1990年7月1日生まれ。岐阜県多治見市出身。Global Grow Cambodia 代表取締役社長。青年実業家。 東北高→中京大→カンボジア。ソフトテニスを12年間続け、学生時代に三度の日本一を獲得。現在はカンボジアソフトテニスナショナルチームのヘッドコーチとして活動中。また、教育(スポーツ・音楽・文化交流)という軸でさまざまなプロジェクトの構築を行っている
 

YouTube出演に抵抗がない10代選手たち

 
ーー3か月ぶりに、YouTubeのお話を。最近は大学生や高校3年生など、より若い選手の出演が目立っています。出演は依頼しているのですか?
 
 依頼もしていますが、TwitterのDMなどでご本人から直接連絡いただくケースも多いです。それと、Twitterで「質問箱」をやっているので、「〇〇選手が見たい」などといただいた意見をタイムラインでやりとりしていると、それを見たご本人が「僕でよければ協力します!」とDMをくださったこともありました。本当にありがたいです。
 
 あとは、偶然の機会も多いです。最近公開した鶯谷高の渡邉美野選手と永田玲奈選手の出演は、一時帰国中によく練習に行く地元のクラブに2人が来ていたのがきっかけです。鶯谷高の外部コーチが中京大の後輩だったので、スムーズに依頼できました。
 
 中京大つながりといえば、三重高の浪岡菜々美選手と藤城みちる選手もですね。藤城選手とは、彼女が中3のマレーシアの大会で一度お話ししたことがあったのですが、覚えてくれていたみたいで、1月の社会人学生対抗を観戦していたときに声をかけてくれたんです。三重高男子の玉川裕司監督は中京大の先輩なので出演依頼をしたときに学校への確認もしていただいて、三重高での撮影が実現しました。
 

三重高の浪岡菜々美(左)/藤城みちるが登場! 撮影ではウォーミングアップも紹介した

 
ーー未成年の出演は、気を使いませんか?
 
 学校や監督、保護者への確認は徹底しています。少なからず迷惑がかかってしまう可能性もあると思うので。それでも、大学や実業団に進んで日本代表を目指し、ソフトテニス発展の思いを持つ若手選手に協力したい。露出機会を増やすことは選手のブランディングにつながると考えています。
 
 10代選手との撮影機会が増えて感じるのは、彼らはネット上に出ることに全く抵抗がないこと。そして、ソフトテニスが強いだけじゃダメということも分かっていると感じます。例えば、僕らの世代は「競技発展のために頑張りたいけど、できれば顔は出したくない」というのが本音だと思うんです。でも今の10代選手は、この先ソフトテニスで食べていくためには、自分でファンを増やして選手価値を高めていかなければならないと危機感を持っている気がします。
 
 若い選手のこうした考え方には、ネットやSNSの普及が大きく影響していると思います。ソフトテニスに実業団はあるけれど、プロはまだ船水颯人選手一人きり。「これだけ頑張っているのだから、ソフトテニスで生計を立てられたらいいな」と思う人も多くなって来ているのではないでしょうか。そのために自分で発信していきたいけど、まだ高校生なのでコツも注意点も分からない。SNSの効果的な活用法などにも興味があって、絡んでくれる人も多いのかと感じています。
 

2019年11月には、山形県で羽黒高の澤田吉広(中央右)/荒木駿(中央左)との撮影が実現

 初対面で、1本15分×4本を撮影

ーー撮影はどんな感じで進むのですか?
 
 基本的に学生とは初対面のケースがほとんどですが、彼らはあまり時間がないので、ほとんど打ち合わせせずに撮影を開始することが多いです。彼らは動画を見てくれているので、撮影の流れも分かっているんですよ。ざっくりいうと、「オープニング→プレー→解説→エンディング」という感じです。僕も選手もアップしないと動けないので、ボレーボレーとショート乱打、そして乱打は必ず撮影していますね。
 
ーーボレーボレー対決はトップ選手のテンポに圧倒されて、ずっと見ていられます。
 
 実は、ボレーボレー対決や乱打対決が人気コンテンツです。僕がボコボコにやられているだけですが(笑)、いろんな角度から見られるように編集も工夫しています。もちろん楽しんで終わりではなく、アップが終われば技術解説のための細かい撮影も進めていきます。
 
 10代選手はカメラ慣れしているというか、現代っ子というか。しゃべりもうまくて、基本的には一発OKでどんどん進められます。彼らに何度も会えるわけではないですから、1回に3、4本分は撮りたいと思っているので、ありがたいですね。
 

2019年インターハイ団体優勝の埼玉平成・赤川友里奈も登場! 何気ない会話でキャラクターが分かるのも楽しい

ーー撮影で注意していることはありますか?
 
 歳が10歳くらい違うので、相手にできるだけ気を使わせないように彼らと同じ目線というか、カメラの前で等身大でいてもらえるような雰囲気作りは心がけています。できるだけフランクに。撮影後にはご飯を食べに行くことが多いのですが、そこで初めてじっくり話すんです。本当は、この後に撮影のほうがいいですよね(笑)。
 

 それと、視聴者の方には物足りないかもしれないのですが、選手のこだわりなど細かい技術にはあえて触れないようにしています。実は、選手たちは惜しみなく細部まで解説してくれるのですが、カットすることもあります。それが弱点やスキになってしまうと選手にとって不利になりますし、動画に出てもらったことで損をしてしまいますから。

ーー選手ファーストですね。

 僕は将来的に選手をマネジメントして講習会などにつなげたいと考えているので、「もう少しこの人に教えてもらいたい」という印象を残せることはとても大事だと思うんです。これからは、強いだけでなく、キャラクターとして人気のある選手が求められる時代になると考えています。

 もちろん、選手が話してくれたままに細かい技術をたくさん紹介するのは簡単ですし、もしかしたらPVも伸びるかもしれません。でも、僕のチャンネルはあくまでも選手の露出機会を増やすのが目的です。まだ赤字ですが、だからこそ、その分、他の仕事も頑張っています。これからもこのスタンスは変わりませんね。Masatoチャンネルに出ることが、選手の一つの目標というかステータスというか、そういう機会にもなっていけばうれしいな、と感じます。

 それから、動画の価値は1、2年後に出てくると思っています。本人の顔つきや打ち方はどんどん変わりますし、自分が話している様子ってなかなか記録していないじゃないですか。過去の動画で自分を振り返ることは、成長につながると思うんです。僕自身の経験でもあるんですけどね。 

荻原雅斗のカンボジアあるある
⑧屋台飯が安ウマ!
 自宅にキッチンがない荻原さんは外食率100%だが、カンボジアの屋台は100〜150円で男性もお腹いっぱいになるほど食べられるという。ご飯の上に豚肉と卵と野菜炒めがのった丼系など、カンボジア料理は日本人も馴染みやすいそう。
写真提供◎荻原雅斗 取材◎井口さくら

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