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2023.02.20

【メンタル強化連載】第10回後編・コーチと強い信頼関係で結ばれたトップ選手でも、アドバイスを受け入れられないことがある

第十回◎交流分析理論(後編)

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お互いの心理的特性と状態を意識することは、アドバイスする側の立場でも重要(写真◎井出秀人)

日頃の練習や試合で気になる、ちょっとしたメンタルの疑問への考え方を佐藤雅幸先生に解説いただく本連載。第10回は、アドバイスを素直に受け入れられない場合の対処法をテーマに、二回に分けてお届け。後編では、選手側もアドバイスを受け入れるための訓練が必要であることが分かる。

心理的特性と状態を意識することは、アドバイスする側でも大切

佐藤雅幸(専修大学教授)

人の話を聞く時には、その人の心理的特性と、その時に置かれた状態が重要です。「心理的特性」とは性格の根っこの部分であり、傾向のことです。また「状態」とは、その時の姿やあり様などを意味します。ここでは、コーチと二人三脚で歩むトップ選手に良くある事例をご紹介します。

どんなに強い信頼関係で結ばれているコーチのアドバイスでも、選手にとって受け入れられないことがあります。試合に負けて感情的になっていて、まだ心が収まらない時のアドバイスは、正論であっても聞ける状態ではないはずです。そのような場合、選手は、前回紹介したA(アダルト=大人)の自我状態を使って、「今は聞ける状態でないので、少し時間をください」と伝えること。ジョギングやストレッチをしながら感情を整理整頓した後ならば、落ち着いてコーチと話ができるようになるものです。

良いアドバイスをもらうためには、選手側もアドバイスを受け入れるための訓練が必要です。「教え上手な指導者」がいるのと同じように、「教えられ上手な選手」がいることも事実です。立場を変えて、自分がアドバイスする側になって考えてみると、「なるほど。こんな気持ちでアドバイスしているのか」と理解でき、「こういう気持ちになるのだから、このアドバイスを受け入れたら、きっと伸びていけるぞ」と前向きになれるようになります。

「テニス選手がコーチを変えて、よく褒めるコーチで最初はよかったけれど、なんでも褒めるので信用ならないと言ったケースもあります」と佐藤先生

お互いの心理的特性や状態を理解することは、アドバイスする側の立場でも重要です。指導者においては、選手の心理的特性を理解していると「こう説明すれば、この選手は受け入れて理解できる」というのも分かるもの。データで説明する方がいいのか、「あのショットがすごく良かったよね」と言ってから、「でもね、これはちょっとダメだったよ」と、叱咤激励賞賛のタイミングなど考慮したり、選手によって伝え方を変えることが大切です。

コミュニケーションというと、話上手な人を連想するかもしれません。しかし、もっと大切なのは、聴き方です。選手の話を聞く時は、「ほほぉ、なるほど、それで……」と、しっかり相手の言葉に耳を傾け(傾聴)、話しやすい環境をつくることです。指導者は、NP(ナーチャリングペアレンツ)の自我で養育的に受け止めてください。次に、A(大人)の自我を使って、問題を解決するための論理的な方法を見つけ出し、最後に、強い決意と使命の機能を持つCP(クリティカルペアレンツ)の自我で実行してください。

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写真◎BBM 取材◎井口さくら