
【丸中大明インタビュー前編】引退、コーチ就任! 「ここまで自分自身を作り上げてきてくれた競技」
ソフトテニス・マガジン2025年6月号

――引退をするというのはどういうタイミングというのはありましたか。
丸中 納得できるレベルまで高めることができたら引退と考えるようになりました。膝の大怪我からは試合ができて良かったとか、自身の成長を実感できる事に魅力を感じるようになり、その時点で私は引退を考えていました。より優秀な成績を目指す事よりも、自身が納得できるレベルまでプレー出来たらいいのかなという考えに変わりましたね。
――ケガを具体的に教えてください。
丸中 4年前に左膝の前十字靭帯を切りました。このチームで活動するには手術が不可欠であり、遅くて1年かかるということでした。実際には4週間の入院生活を経てその後、リハビリを約8か月間と2回目の手術を経て復帰できました。競技生活の中で最も身体のピークだった時期であっただけにかなりショックでした・・・。
――膝はテニス選手にとっては大きな部位です。
丸中 日常生活にも影響が出てしまいます。最近はラリーが速くなっているので、対応するために大きな役割を担っていますよね。ケガする前は膝に対して知識もほとんどなかったので、リハビリ期間を経て重要さを痛感しました。
――コンタクトスポーツで前十字を切るのはよく聞きましたが、ご自身の試合の中でも動きで切れたわけですね。
丸中 そうです。スマッシュが苦手なのでジャンプスマッシュを取り入れていました。そのために必要な所を徹底的にトレーニングした結果、私の武器になりました。ただ同時に、想像以上に身体が動いてしまう感覚もありました。練習試合で、「高く飛びすぎているな」とジャンプ中に雑念が入り、集中力が切れてしまい怪我が起きてしまいました。
――いつも以上に状態が良かったから、そういうジャンプをしたとも考えられますか。
丸中 身体の調子が良く、特に精神面が良かったです。弱点を自分の武器に変えた事が毎日の練習とトレーニングに充実感がありました。その反面、疲労が溜まっている身体に気づかず、無理をしたと思っています。
――セーブできるのですか。
丸中 非常に難しい問題だと思います。村上さんもアキレス腱断裂と大怪我をされたのですが、話を聞くと私と同じように身体が動き過ぎたようです。それを踏まえ私はコーチとして選手たちに伝え続けていくべき大事な要素だと考えています。でも、調子が良いときは疲れを忘れてずっとプレーしたくなると思うんです。私もその時間の楽しさを知っているのでやらせてあげたいのですが、怪我のリスクも考えると止めないといけないですし・・・(笑)。
――コーチとして、そういうことを経験されて、知っておくのは良いことですね。
丸中 選手達が競技生活を長く続けていく上で非常に大事な事だと思います。特にこのチームは一人ひとりが日本トップレベルの選手なので、私の経験と言葉で伝え続けていくつもりです。
コーチとして視野が広がった
――長く競技を続けて来られましたが、テニスはどういう存在でしたか。
丸中 私を作ってくれたソフトテニスですね。小学校2年からソフトテニスを続けてきて、憧れのNTT西日本で引退できた。本当に多くの方と出会い大きく成長できたと思います。今回の選手引退にあたって、ソフトテニスは一区切りという感覚は一切ありません。年齢を重ねるごとに、他の選手のプレーを見ることと、話を聞きながら学ぶことが楽しくなりました。縁あって、コーチとしてもう少しNTT西日本のチカラになれるので、今後も楽しみです。
――実際にコーチとして1カ月弱を過ごされましたが、ご自身に変化はありますか。
丸中 選手たちの顔色や表情をよく見るようになりました。選手の頃は自分のことのみ考え目を向けていましたがこの立場になって、各選手のコンディションが少しずつ分かるようになったと思います。視野が広くなってきていますね。
――難しいと感じることはありますか。
丸中 各選手の自主性が高く、トップレベルの実力を持っているチームなので、難しいと感じたことは今のところないですね。監督・コーチのアドバイスで選手たちがプレーできるのが一般的なチームだと思うのですが、このチームは選手のおかげで安心してコーチができていますね(笑)。
――入社されてから日本リーグ、STリーグも負けなしでした。
丸中 入社前から続いている連勝です。
――勝ちながら覚えていくような感じですか。
丸中 日本リーグ、STリーグ中に連勝記録はまったく頭にありません。各対戦の試合に集中し勝ち点を挙げることだけを考えていました。他の方から連勝記録の話をされることが非常に多いですが、気にしていないです。
※次回に続く
まるなか・たいめい●1993年9月5日生まれ。宮城県出身。JST仙台(小2)→宮城野中→東北高→中央大。170cm。AB型。右利き・後衛。2010年全日本高校選抜優勝。2011年インターハイ団体優勝。2017・2018年全日本社会人優勝(/長江光一)。2016~2024年日本リーグ・STリーグ優勝。2018年全日本インドア優勝(/長江光一)/2018年アジア大会団体銀メダル。2019年世界選手権団体金メダル。

2017、18年、長江光一と組んで全日本社会人を連覇した