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2025.07.16

【キャリアデザイン入門~競技から学べること】第1回◎本コラムで伝えたいこと

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 はじめまして。人材開発コンサルタントの山岸慎司と申します。私は複数の企業に30年
勤務した後、キャリアコンサルタントという資格をとり、企業の研修講師と若者の就職支
援の仕事をしています。ソフトテニスは、大学の体育会に所属しましたが、東京六大学リ
ーグや関東リーグ3部で少し試合に出たことがある程度のレベルです。社会人になってか
ら、長くソフトテニスから離れていましたが、15年ほど前に細々と再開しました。3年
前からはご縁があり、日本ソフトテニス連盟の国際委員を務めています。

 私はキャリアコンサルタントとして、帝京大学、駒澤大学、東京経済大学などで大学生
の就職先を探すお手伝いをしてきました。これまでに数千人の学生と出会いました。そこ
で感じたのは、何かスポーツを一生懸命やった経験がある若者(アスリート人材)は、社
会人として必要な能力・スキルを数多く身につけているということです。例えば、努力を
継続する力、自己統制力、チームワークなどです。一方、アスリート人材は、その競技以
外の世界を知らないためか、意外に自分に自信がなく、就職も狭い範囲でしか考えられな
いケースも多くみてきました。これはとてももったいないことです。

 世界においても、国際オリンピック委員会(IOC)などでは、20世紀末頃から、「ア
スリート人材が競技を引退した後、キャリアの方向性を見失う事例が多くみられることは
、社会的損失である」と問題になってきました。欧米ではその後、アスリートの引退後キ
ャリアを支援する取り組みが始まり、体制が整いつつあります。日本のスポーツ庁でも、
この問題に対応するため、2017年にスポーツキャリアサポートコンソーシアム
(SCSC)を設立し、アスリートキャリアコーディネーター(ACC)の育成を始めま
した。私も2022年にACCに認定され、アスリート人材のキャリア支援を始めています。

 さて、ソフトテニスに話を移します。ソフトテニスは、他のスポーツと比較しても、バ
ランスよく多くのことを学べる素晴らしい競技だと思います。まず、学校の部活動を中心
にして発展したため、教育スポーツとしての魅力があります。主にダブルスという2人対
2人のチーム競技のため、ペアとのコミュニケーション力が磨かれます。団体戦を通じて
、チームワークも高められます。また、コンタクトスポーツではないためケガのリスクが
少ないこと、男女が混合で練習や試合をできること、生涯にわたり楽しめることなど、多
くの魅力があります。

 これからの本コラムでは、主に次のことをお伝えします。
・ソフトテニス競技を通じて、社会人に求められる能力・スキルの多くを身につけること
ができる。これは、若い時の就職だけではなく、その後、幸せな人生キャリアを歩むため
の財産になる。
・人生100年時代では、60年以上、働く必要がある。時代とともに、仕事や求められるス
キルは変化していく。自分のキャリアを主体的に考え、柔軟に対応していくことが求めら
れる。
・小・中学生、高校生、大学生の保護者や指導者の方々に、それぞれの段階でのキャリア
支援のために必要な考え方について、理解していただく。

 次回以降は、「人生100年時代のキャリアデザイン」、「スポーツ庁が推進するデュ
アルキャリア(選手の現役時代から引退後キャリアの準備を始める)」、「キャリア開発
の視点でみたソフトテニスの魅力」「ソフトテニス選手のキャリア形成プロセス」、「ア
スリート、特にソフトテニス選手が身につけられる能力」「アスリート人材は就職に有利
」「指導者に求められるキャリア支援」などのテーマを掲載していく予定です。よろしく
お願いいたします。

PROFILE
山岸慎司
やまぎし・しんじ
日本ソフトテニス連盟国際委員、スポーツ庁管轄アスリートキャリアコーディネーター、
国家資格キャリアコンサルタント。企業研修講師および東京経済大学講師(キャリア関連
講座)。東京大学農学部修士、ロンドン大学経営学修士。現在、法政大学キャリアデザイ
ン学部大学院でソフトテニス選手のキャリア開発支援を研究中。著書『成功する就活の教
科書』(中央経済社)他。ポッドキャスト番組『2030年のキャリア戦略』毎週木曜配信。