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プレー&コラム
2018.06.01

ようやくスタートラインに立てた。ここからが本当の勝負

【WEB連載】船水颯人『JKTへの道』#39 アジア競技大会日本代表選手予選会

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 全日本シングルスで2年連続3度目の優勝を決めた船水颯人。時計の針を巻き戻し、日本代表選手予選会での死闘を振り返る。上松俊貴との決勝で両脚のふくらはぎが痙攣。その中でも勝てた理由は?

 ソフトテニスマガジン・ポータルでは、船水颯人の2018年ジャカルタ(JKT・ソフトテニス競技はパレンバンで開催)アジア競技大会に向けた取り組みをインタビュー連載で追っていく。船水颯人『JKTへの道』第39回はアジア競技大会日本代表選手予選会について。

船水颯人/ふねみず・はやと 1997年1月24日生まれ、21歳。青森県出身。身長170㎝、右利き、後衛。黒石烏城クラブ(小1)→黒石中→東北高→早稲田大4年

これでダメならこれで行く、臨機応変な対応ができた

――前回の連載ではアジア競技大会日本代表選手予選会の準備段階で手応えを感じていたと話していました。

 特別にこのショットというものではなく、体の使い方などですね。ある程度、自分が思い描く動きができたと思っています。具体的に説明するのは難しいのですが。

――コンディションを調整する準備だけではなく、予選会に照準を合わせ、大学3年間で準備してきたこともあると思います。

 もちろん。技術面だけでなく、筋力トレーニング、スピードの強化など、総合的にレベルアップを図ってきました。その手応えは感じています。最後の最後で体力勝負となり、結果をしっかりと残せたことは自信にもなりました。

――決勝は満身創痍でした。

 コンディションが悪い中でも粘れたのは、体力を強化したこともひとつにあると思います。ただ、それだけではありません。以前に比べて、戦術的な引き出しも増えていたので、すぐに戦い方をシフトチェンジできました。

 以前の僕であれば、動かない体にムチを打って、いつも通りの戦い方で挑んでいたかもしれません。これでダメならこれで行く、という臨機応変な対応ができたと思っています。

――肉体的に極限の状態の中でも、最良の選択ができたのはなぜですか。

 戦術的な引き出しがあったからこそ、落ち着いて、最善の策を取られたのでしょうね。普段の練習から、何パターンからの戦い方のイメージを持ち続けていました。もちろん、闇雲に戦術の幅を広げて、迷いが生じてしまっては元も子もありません。状況判断が大事だと思います。

 ただ、僕の描く理想のテニスとは全くかけ離れたものなってしまった。まだまだイメージと実際のプレーの誤差を無くし、追求して行く必要があります。

準決勝の船水雄太戦で

自分が苦しいときは、相手も苦しいはずだと

――体に異変が起きたのは、大会中のいつからだったのですか。

 決勝トーナメントに上がってからです。試合を重ねるごとにきつくなってきました。原因は体調管理不足です。準々決勝の丸山(海斗)戦も何とか勝った感じです。兄(雄太)と戦った準決勝は予想通りラリーが長くなり、さらにしんどかった。試合途中で何度も両脚のふくらはぎがつりそうになりました。

 決勝の上松戦は、立っているのもしんどいくらいでした。1ゲーム目が終わったところで、タイムを取ったのもそのためです。ただ、時間が経過していくと、しんどいのはお互いさま。少なからず、上松はやりづらさを感じていたはず。苦しんでいたのは、僕だけではなかったと思います。自分が苦しいときは、相手も苦しいはずだと。

――運を引き寄せるのも、実力のうちなのでは?

  チャンスはいつ訪れるか分からない。しかし、そのチャンスを掴み取れるかどうかで勝敗が決まる。準備をしたからと言って百発百中でチャンスを掴み取れるわけではないし、そのチャンスが来るかどうかも分からないですが、そのための準備は、間違いなく必要だと思います。

――優勝した後に「自分との戦いでした」と話していましたね。

 この大会で負けると、日本代表には選ばれないと思っていた。「自力でつかみ取るしかない」という気持ちで臨んでいました。大学に入学して以降、日本代表としてアジア競技大会に出場することがまず1つの目標でした。そのチャンスを目の前にして、逃すことなんて考えられなかった。

――危機感があったのですね。

 すごく。良い意味で自分自身にプレッシャーをかけていて、それが結果に結び付き、ようやくスタートラインに立てた。今は、金メダル獲得が最大の目標であり、引き続きアジア競技大会への準備をしているところです。

 ここからが本当の勝負です。

両脚にテーピングを巻き、満身創痍の決勝を戦い終えた直後


取材・構成◎杉園昌之 タイトル写真◎阿部卓功 写真◎宮原和也

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